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108人揃えなかったエンディングー3
2が抜けてますがな(笑)

細切れに放出中。
108人揃えなかったエンディングの続き話、1と同じ登場人物で1時間後くらい。





「距離があるな…」

前方を睨みつけながらゲオルグが低く呟いた。セイリークも厳しい目を向ける。その巨大な生物は船から少し離れた海上にゆらりと浮いていた。
ゆっくりと上げた翼の端に魔力が溜まっていくのを感じたかと思うと、そこから黄色い光がほとばしる。

得物が使えれば勝てる自信はある。
だが、それも相手に届けばこそだ。
今自分たちは船の上で、相手は海の上で。どうしたって間にある海が邪魔をする。


飛び道具か魔法があれば。
そう思った瞬間、セイリークは目の前の大きな背中に声をかけていた。


「ゲオルグ」
「何だ」
「僕が魔法で攻撃する。それでこっちにおびき寄せることが出来るかもしれない」
「魔法?だってお前……」
「あれじゃない」

言い淀んだ言葉の先を遮ってセイリークは首を振った。
黎明と黄昏。太陽と夜の絆から生まれた太陽を抑える真に近い紋章達。両手に宿ったそれらを、彼はファレナを発つ前に宮殿に返していた。
だから、今この両手には何の紋章も宿っていない。

……だが、額には。

「断罪の紋章を宿してるんだ」

紋章師にはそれも外そうかと尋ねられた。だが首を振って断った。
ベルナデットによればこれは罰の紋章と呼ばれる紋章の眷族だという。
使用者の身にも害を及ぼす悪しき紋章だと、だから使うなと言われたが。

「(――お似合いじゃないか)」

その時、そう思ったのだ。
勿論使う気はあまりなかった。だが、断罪というその名、宿主にも害を与えるというその性質に、惹かれた。
大切な人を守ることの出来なかった自分への戒め…のつもりだった。

「丁度いいよ、離れた場所からも攻撃できるし」

にこりと笑った顔は、我ながらいい笑顔をしているんだろうなと思う。
ゲオルグが何か言いかけたが構わず額に魔力を集中させた。邪魔される前に発動してしまうつもりだった。この魔法の効能は一応頭に入っている。

「断罪の紋章よ!暗き呼――…」

目の前を睨みつけて即死魔法を口にしかけた時だった。
突然目の前が真っ暗になった。

「やめた方がいいよ」
「ッ!?」

穏やかな声は頭の、すぐ後ろから。
一瞬思考が固まった後、誰かの手の平によって視界が遮られたと……いつの間にか背後に回った人間が後ろから自分の顔に手を当てているのだと気が付く。
同時にざあっと肌があわ立った。
反射的に覆われた手を払いのけると、一瞬で腰から三節棍を抜き取り振り返る。声が発せられた場所に突き出すと同時に、耳元でビュッと風を薙ぎ払う音がした。
聞きなれた、ゲオルグの抜刀の音。

その、百戦錬磨の彼らの武器が、共に空しく宙を薙いだ。
信じられない思いにセイリークの目が見開かれる。隣りで同じ思いを抱いたらしいゲオルグが身体を固くする気配を感じた。


そして、二つの剣呑な視線の先。
信じられないスピードで一瞬で二人の武器の間合いから飛び退っていた青年は。

「……えっと。相手が違くありませんか?」

セイリークの三節棍とゲオルグの刀の先を見つめながら、なぜか困ったように微笑んでいた。





うちの王子は額に断罪、右手に黎明、左手に力の紋章でラスボスに挑みました(爆)。
左手は○○に上書きされてしまったので、残ったのは断罪だけ。
……それってどうよ(笑)
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2006/04/25 07:57 | Comments(0) | TrackBack() | 二次創作

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