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2024/05/17 18:34 |
何となく書いてみた・3
星屑の……二次……?(自信がない)
第1章その2。
今回は自分要素少なめです。



―― 第1章「決戦」 ――


■その2


それは、平原に単独で立っていて周囲に比較対象がないからか、あるいは壁面に窓がないせいか、遠くからでは大きさが把握しづらい建物だった。いったい何回建てなのかもよく分からない。
ただ、基部から頂上までほとんど直径が変化しない円柱状の構造は、いかにも柱という呼び名にふさわしい。

その≪秩序の柱≫を目指し、彼らは走り出した。
第一陣を先頭に、第二陣が続き、そしてたった4人の第三陣が続く。
108人は一体となり、≪オルダ≫の本部に近付いていった。

≪オルダ≫が勢力を伸ばし始めてから15年あまり。
≪星の兵団≫が反オルダを掲げて戦いを始めてから10年あまり。
とうとう、この時がやって来た。

108人が近付くにつれ、周囲を巡回していた無数の甲鉄兵が次々に迎撃態勢に入っていく。
この甲鉄兵は外見こそ鋼の鎧に身を包んだ巨漢だが、中身は人間ではない。魔道で動く人形の兵士だ。意志も感情もなく、命令に従って一糸乱れぬ連携行動を行う甲鉄兵は、秩序に執着する≪オルダ≫に似合いの兵隊である。
今も敵の接近に気付いた甲鉄兵は一列に並び、その後ろに等間隔で別の一列が続き、巨大な両翼を広げるような美しい隊列を組んでいく。その先頭に並んでいる一列が、普通の人間では持てないような重くて大きな武器を一斉に構えた。

「来やがったぜっ! デクの棒どもがよ!!」

トッシュの横を走っていたガレガドが唇を歪め、楽しそうな声音で叫んだ、その時。
右翼の一角で、爆音が轟いた。
足を止めずにそちらへ顔を向けると、遠くで巨大な火柱が上がっているのが目に入った。
そこへ、新たな爆音が重なる。
落雷と見紛うばかりの強烈な雷光がトッシュたちの左手から前方へ幾筋も走り、その先にある大地と甲鉄兵を薙ぎ払っていた。
まだ距離はあるものの、第一陣の中でも魔道に秀でた者たちが遠距離からの先制攻撃を開始したのだ。

ブランシュが、ひゅうっと口笛を吹いた。
「うっわー。ハデにやってんじゃん!」
「ふん、こちらも負けておられんな!」
前を走っていたシャリヤルは不敵に笑うと、腰の後ろに差した曲刀を引きぬいた。
彼を隊長格として、トッシュ、ガレガド、ブランシュ、リーオー、アシェン。
それがトッシュに割り当てられた隊だった。第一陣として派手に暴れて甲鉄兵たちを蹴散らし、第二陣が塔に突入するための道を切り拓くのが当面の役目である。

まだ距離はあったが、シャリヤルが刀身に魔道力を込め始めると、それはたちまち烈火の炎に包まれた。
そのまま刀を振り抜けば、炎は刃の形のまま宙を駆けていく。そして遠方の甲鉄兵に命中した。
普通の火であれば甲鉄兵はビクともしない。しかし、魔道の炎には敵わず、炎の刃に切り裂かれた甲鉄兵は見る間に燃え上がり、さらに燃え尽き、ガラガラと崩れ落ちた。

「ずりーぞ、おっさんっ! オレが先にブチかますはずだったのによっ!」
「はっ! 接近戦しか出来ない者が何を言うか!」
「るせーーーっ!! 直接攻撃の1番はもらったああぁぁっ!!」
吼えるように叫んだガレガドが両手の銛を抱えて速度を上げる。その真正面に、シャリヤルの炎を回避した甲鉄兵が2体現れた。急に進路を変えたためか、Uターンをするように移動する彼らは背中をこちらに向けている。

「おらああああっっ!!」

甲鉄兵の死角から突っ込みながら、ガレガドは右手の銛を振りかぶる。そのまま首筋に勢い良く叩き込んだ。
甲鉄兵の首の後ろ、人間で言えば延髄のあたりには魔道核がある。それが甲鉄兵の動力源であり、これを破壊されると動けなくなるのだ。
渾身の力で叩きこまれた穂先はあっさりと首を貫通し、それだけでは勢いが止まらず、甲鉄兵の巨体を突き倒し、引きずった。その先には丁度もう1体の甲鉄兵がおり、避ける間もなく左手の銛で喉笛を突き抜かれた。

「へへっ! オレは2匹やったぜっ! どーよ、おっさん! …って、うわっ!?」
銛を引きぬきながら勝ち誇ったように言って振り返ろうとしたガレガドのすぐ横を、輝く光弾がかすめ飛んでいく。それは彼の背後に迫っていた甲鉄兵を直撃し、そのまま上半身を爆散させた。
「……危ないなあ。手柄自慢はカタがついてからにしてよ」
ガレガドに追いついたアシェンが苦笑する。魔道の光を放ったのは彼だ。
「危ないのはてめーだろ、アシェン! オレにも当たるとこだったぞ!?」
「ガレガドがあいつらの接近を許したからでしょ」
「こんなガラクタごときに後ろを取られるとは、タルんでおる証拠だ」
「な、なんだとぅ!!」
シャリヤルにまで責められ、不機嫌に怒鳴るガレガド。
さらに続けようとした彼に、今度は左側から「ばーっか」と声がかけられた。

「だから、そーゆーのはカタがついてからにしなって!」
「なにおぅ!」
「いくよ!」
ブランシュの最後の言葉はガレガドにかけられたのではない。左前方に走った彼女の前にいるのはリーオーだ。
新手の甲鉄兵群を迎え、左手に持った楯を正面に構えている。右腰に剣を佩いているが、これは抜かない。それがレオノス守護騎士の戦い方だ。
リーオーはブランシュに軽く頷きを返すと、気力を研ぎ澄ませて楯に送り込んだ。すると、楯の表面に刻まれたレオノス守護騎士の紋章が白く輝き始める。次の瞬間、光の筋がぱあっと左右へ展開した。
突進してきた2体は、その光に触れた瞬間、まるで岩の壁に激突したかのように動きを止める。

「ブランシュさん!」
「はいよっ!」

返事と同時にブランシュは両手から左右に1本ずつナイフを投げた。
まるで見当違いの方角に投げたように見えたが、柄に鋼線が結ばれたナイフは光の楯を超えたところで方向を変え、大きな弧を描きながら加速を始めた。甲鉄兵の後ろへ回ったところでさらに軌道を変え、背後から2体それぞれの急所に突き刺さる。ナイフそのものは優美な形を取っているが、それらは鋼の装甲をあっさり貫通した。
ブランシュが鋼線を引くと、ナイフは甲鉄兵の首から離れて彼女の手元に戻る。同時に、甲鉄兵が地響きを立てて倒れた。

「よし!」
親指を立てて笑うブランシュに、頷きを返すリーオー。その間に、前方には多くの甲鉄兵が集結してきた。
甲鉄兵は、強敵と判断すれば密集隊形に隊列を変えて押し潰しに来るのだ。
まるで一塊の大きな鋼のようになって甲鉄兵たちがリーオーたちに迫る。
だが、リーオーもブランシュも慌てた様子はない。密集隊形にさせる、それが彼女たちの作戦だ。秩序だった行動を取る甲鉄兵は動きが読みやすい。だから、一箇所に集まるよう誘導していたのだ。

「トッシュ! ブチかませえっ!!」
後方に向かってガレガドが怒鳴る。
シャリヤルたち5人は、さっと二手に分かれて彼のための道を作った。

皆から一歩も二歩も下がったところ――そこに、トッシュがいた。
腰を低く落とし、目はまっすぐ前を向いている。手にした槍は、穂先が光を帯びて輝いている。
「いけえっ!!」
ガレガドが叫ぶのと同時に
「はあっっ!!!」
気合と共に、地を蹴った。

突き出した槍の穂先から放たれる光が渦を巻き、トッシュの体を包み込んだ。そのせいで、まるで彼ごと1本の槍と化したかのように見える。
その槍が、5人の間を抜け、大気を裂いて突き進んでいった。
人の足で出せる速度ではない。弓から放たれた矢か、あるいはそれ以上か。現に、トッシュの足は地を離れている。なのに、槍と彼は突き進むほどに加速していく。

哀れな標的たちには、回避する時間も防御する方法もなかった。
まず、先頭にいた甲鉄兵が、光る穂先が触れたと同時に粉々に砕け散った。
すぐ後ろに続く2体目も一瞬後に同じ運命を辿る。そのさらに後ろにいた1体も。
同一線上にいなかった甲鉄兵も無事では済まなかった。
拡がった光の渦が触れただけで、鋼の装甲が紙のように引きちぎられていく。
トッシュの足が再び地に着いた時、彼の後ろには甲鉄兵十体近くの残骸が転がっていた。

仲間たちはそれぞれ特別な力を持っているが、これがトッシュの持つ力だった。
ある程度の時間をかけて気力を高めなければ使えないが、そのかわり、ひとたび放てば必殺の威力を示す一撃を放つことが出来る。

「よーっし!」
「やったな! トッシュ!」
「ふむ……何度見ても凄まじいものだな」
「うんうん、コワイねえ」
「さすがですね」
「いや……皆があいつらを集めてくれたおかげだし」
ブランシュが手を叩き、ガレガドがバンバンと背中を叩く。
他の仲間たちからの言葉もくすぐったそうに聞きながら、トッシュは周囲を見回した。

塔の周囲のあちらこちらで、粉塵や煙が上がっていた。
第一陣がそれぞれに奮闘していたのだろう、甲鉄兵の防衛網は既に寸断されている。そして守りが薄くなった所から第二陣の仲間たちが塔への突入を開始していた。
トッシュたちから一番近い入口では、熊のような大男が(実際見た目は熊なのだが)、旗を塔に突き刺そうとしたものの勢いあまって壁を壊していた。怪力で知られるアンヴァリン族の隊だ。

ここまでの作戦は成功だ。
トッシュたちも早く彼らの後を追って塔へ突入したいが、外の敵を遺しておけば追撃されるおそれがある。
もう少し敵を掃討しておく必要があった。

「おらトッシュ、とっととカタづけるぜっ!」
「ああ」

ニヤリと悪党めいた笑みを見せるガレガドに大きく頷きを返すと、トッシュは槍を握りしめた。


 *********


トッシュたちシャリヤル隊が≪秩序の柱≫に突入したのは、それからしばらく後のことだった。
ある程度の数を倒すと、甲鉄兵たちの動きはいきなり悪くなった。足元に仲間の残骸が散らばっているせいで秩序だった行動を取ることができず、それが彼らの判断能力を引き下げたのだ。
魔道で動く人形の、それが限界なのだろう。
残った甲鉄兵たちがその場でぐるぐる回りだしたのを確認するとシャリヤルはようやく突入を決めた。
第一陣の中でも比較的突入が遅いだったため、その言葉にガレガドは意味もなく雄叫びを上げ、ブランシュがいつものように遠慮なく頭をはたいた。

いざ突入すると、≪秩序の柱≫の内部は思った以上に広大だった。
1階層の面積でさえ並の城に匹敵するというのに、それが十階層以上も続いている。
これほどの石造建築を完成させたのが≪オルダ≫であるならば(その可能性が非常に高いが)、この建物ひとつを見ただけで≪オルダ≫の権力と財力、技術力をうかがい知ることができる。
ただし、床も壁も階段も、驚くべき精密さで組み上げられているものの、どこもかしこものっぺりとしていて装飾のひとつもなく、正直なんの面白みも感じない建物だ。
その上あらゆる箇所の構造が同じ規格で統一されているため、どこもかしこも全く同じに見える。

「意識していなければ自分たちが今どこにいるのか分からなくなりそうだな」
シャリヤルが言い、
「どこにいるのか分からなくても全然困らなさそうだけどね。だって全部同じなんだもん」
アシェンがため息をつく。

「これが完全なる秩序ってヤツかよ? クソ面白くもねえ!」
ガレガドの感想に、珍しく全員が同意した。


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2012/03/26 14:16 | Comments(0) | 二次創作

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