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2024/05/17 19:14 |
何となく書いてみた・2
星屑の二次…と言って良いのかな…。
第1章、その1です。



―― 第1章「決戦」 ――


■その1


その塔は、世界の中心にそびえ立っているのだと言われている。

西方大陸の中心から少し東南へ進んだあたりにある≪秩序の柱≫の存在は、西方大陸はおろか、海を挟んだ東方大陸まで知れ渡っていた。
世界と空を繋ぎ、空を支え、そうしてこの世界を守っているのだという。
天を貫くほどの高さを想像していた者は、実際に目にすると思ったより低いと思うかもしれない。
しかし、”塔”というにはあまりに床面積の広いその建物には、疑いもない威容が感じられた。
この世界の象徴であり、侵すことの出来ない神聖な場所。概ねそのように言われていた。

しかし、≪星の兵団≫でそんなことを信じている者は誰ひとりとしていない。

「塔を建てた組織が勝手にそこを世界の中心だと決め込み、世間に宣伝しているだけだろう」
シャリヤルの言葉を、ガレガドは鼻で笑い飛ばした。
「塔を建てた組織だぁ? そんなん≪オルダ≫に決まってんだろ」
「証拠があるわけではない」
「あーあーあー、あんたの頭はいっつもかってェなあ」
「なに?」

「まあまあ」
放っておくと口喧嘩に発展しかねない2人の間に苦笑しながら入ってきたのはバランダンだ。
「証拠はないけど可能性は高いんですよね? シャリヤル殿」
「ああ。実際、いかにもあの組織がやりそうなことではあるからな。しかも、名前が≪秩序の柱≫など…」
「この世界に完全なる秩序を実現する、なんて言ってる≪オルダ≫に似合い過ぎますからねえ」
「だよな」
ガレガドが腕を組んで大きく頷いた。
「大体、世界の中心ってのも胡散臭えよな。誰が調べたんだよって話だぜ。なあトッシュ?」
「え?」
幼馴染から突然話を振られたトッシュは一瞬きょとんと瞬きをした。
「≪秩序の柱≫って本当に世界の中心にあると思うか?」
「え、えーっと……あんまり考えたことがなかった。どうでもいいかなって」
ガレガドがなんだそれと大げさに目を剥く。
言葉選びが悪かったと苦笑すると、トッシュは表情を引き締めた。
「仮に≪秩序の柱≫が本当に世界の中心にあったとしても、オレたちのやるべきことに変わりはない」

トッシュの言葉に、シャリヤルとバランダンの表情も改まった。
「そうだな、重要なのはそこではない。重要なのは、≪秩序の柱≫と呼ばれる塔が、≪オルダ≫の本部であること……」
「そして、これから私たちと≪オルダ≫との決戦の場になるということ、ですね」
「ああ」
トッシュは頷くと北の空を振り仰いだ。
そこにあるのは森に覆われた小高い丘で、木々の上には薄い雲が広がった空しか見えない。
だが、少し丘を上がっていけば≪秩序の柱≫はすぐに姿を現すだろう。

彼らがいるのは≪秩序の柱≫南方の丘。
そのふもとにある野営地で最後の準備を終えたところだった。


 *********


トッシュは、同郷のガレガド、ブランシュと共に高台に立つ団長を見上げていた。
トッシュだけではない。仲間全員がそれぞれ愛用の武器を手に団長を見上げ、出撃の号令を待っている。

熱気と闘志と昂揚感に包まれながら、その場は妙な静けさに支配されていた。
心の中がざわめいて落ち着かない。
じっとしていることが苦手なガレガドはトッシュよりさらに落ち着かないのだろう。先程からそわそわと身体を動かしてはブランシュに小突かれている。

この場にいるのは108人。団長と側近の4名が高台に立ち、残りの104人がその前に集まっている。
熱気に包まれた彼らの上空を、番の鳥が軽やかな鳴き声を交わしながら、絡みあうように飛んでいった。
あの鳥の位置から見下ろすと、自分たちは一体どのように見えるのだろう。
年齢性別はおろか、手にしている武器も身につけているものもバラバラ。それだけではなく、民族や種族もバラバラだ。まるで幾多の民族、種族の見本市のようでもある。

トッシュ、ガレガド、ブランシュの3人は≪秩序の柱≫のある西方大陸ではなく、東方大陸にある港町デンベーンの出身だ。3人は幼馴染であり、デンベーン自警団の団員仲間でもある。

すぐ左側にいるのは同じく東方大陸にあるレオノス王国の一団。現国王であるジェマイアと、守護騎士団の精鋭たちが落ち着いた眼差しで前を見つめている。

レオノス王国のさらに左側には、砂漠の民クドラトの一族がいる。中心にいるのは弓兵隊を任されているマーリクだ。クドラトの戦士を率いているのはシャリヤルだが、彼は一族から離れて最前列中央にいた。
ちなみにシャリヤルの両脇には、一部地方では魔人と恐れられる銀髪銀眼のビスキール人・キャリオと、獣系の亜人であるアンヴァリン族の族長・メドガが立っている。

トッシュたちの右側には、ユノ姫を囲むようにしてマガラ軽騎兵の一団が立っていた。普段の彼らは非常に明るく、油断すると釣りに出かけたりしているが、有事になると人が変わったように勇敢になる。今も瞳をキラキラさせたりギラギラさせたりしながら号令を今か今かと待ち構えていた。

後ろにいるのはエスカリアの山岳王国を代表する遊撃士団。彼らが仲間に加わったのはつい最近だ。最初はぶっきらぼうな話し方をする人たちと思っていたが、老ニエルドを含め揃いも揃ってただシャイなだけだった。ふと見せる笑顔が優しいことが皆の心を鷲掴みにし、今ではすっかり溶け込んでいる。

遊撃士団の左側にいるのは亜人のアンヴァリン族。洞窟に暮らしている彼らは非常に耳が良く、偵察としても活躍している。今回の≪秩序の柱≫攻略も彼らの偵察によって決まったそうだ。
海賊の親子はアンヴァリン族と共にいる。

遊撃士団の右側にはランブル族がいた。異世界を繋ぐトビラを扱える能力を持つこの一族は皆大きなトンガリ帽をかぶっているが、世界によってこの特徴は異なるらしい。世界間を行き来するだけにどの世界のランブル族が分かるようにするためだとか。ただ、トッシュがかつて会った別世界のランブル族はこの世界と同じようにトンガリ帽をかぶっていた。それを指摘すると「まあ、そういうこともござんすね」と軽く流されたので、どうしてもというほどの規則ではないようだ。

他にも雪女、ガンナー、スクライブ、旅を続けていた剣士、漁師、職人の町の鍛冶師集団などがいる。
そして、この多様な仲間たちをまとめ上げ、ここまで率いてきたのが、今、目の前にいる団長。
その背後に立つ3人の側近は、≪星の兵団≫発足以前からずっと彼と行動を共にしてきたという。

皆が皆、常人にはない特別な力を持ち、文字通り一騎当千の実力を誇る者たちだった。
それ故に、総勢わずか108人に過ぎない≪星の兵団≫が、一時は世界の半分を手中にしたとまで言われた≪オルダ≫と戦い続け、その根拠地に肉迫するまでに至ったのだ。

静まり返っていた時間はトッシュにとってひどく長く感じたが、実際にはそれほど長い時間ではなかった。
団長は、104人の仲間たちをゆっくりと見回した。彼自身、既に完全に戦支度を終えている。身軽だがひどく丈夫な白い鎧を見につけ、愛用の長剣を腰に佩いた。マントが風にゆるくたなびいて、その存在を現実より一回りも二回りも大きく見せていた。

団長は一度うつ伏せがちに目を伏せる。次に顔を上げた時、力強い眼差しが仲間たちを貫いた。

「――みんな。今さら多くを語る必要はないだろう」

静かだが、よく通る声。
仲間たちは固唾を飲んで次に出てくる言葉を待ち構えた。

「俺たちはこれから! ≪オルダ≫を倒す!!」
「おおおおおおお!!!」

たまりにたまったものを爆発させるかのように、仲間たちは一斉に雄叫びを上げた。
トッシュの右隣にいるガレガドは、その大柄な体格に比例して特に大声を出している。ちらりと横を見ると、ブランシュが形の良い眉をひそめて耳を押さえていた。
皆の大声が大気を震わせ、驚いた鳥たちが丘の森の中から慌てたように飛び立っていく。

皆の声が収まるのを待って、団長は続けた。

「完全なる秩序の名のもとに、≪オルダ≫が世界中でどんな悲劇を起こして来たか……俺たちはよく知っている。それを、その全てを、今日限りで終わらせるんだ!」

再び湧き起こる歓声の中、トッシュは思わず左にいるリーオーを見た。
レオノス王国守護騎士団から来た女騎士、リーオー。彼女の国でも、悲劇としか言いようのない事件があった。
レオノス王国の仲間たちは皆その苦しみを味わってここにいるが、その中でもとりわけリーオーは辛い戦いをしなければならなかった。どんなに辛かったか、どんな想いで戦ってきたのか、その事件の際にリーオーと共に戦ってきたトッシュは知っている。

だが、彼女はちらりとトッシュに視線を向けると、かすかに微笑んだ。
「(ありがとうございます。……大丈夫ですよ)」
そんな声が聞こえた気がして、トッシュはわずかに顎を引いて応えた。
リーオーはいつだって大丈夫だと言う。だから素直に信じられないこともあるが、彼女は表情で嘘をつくことができないのだ。だから、今の表情に嘘がないことがトッシュには分かった。
「(がんばろう)」
「(ええ)」
目線でそう会話を交わす。
リーオーの向こうで、やはりレオノスの宮廷魔道士だったアシェンが冷やかすように笑っていることに気づくと、トッシュは視線を前方へと戻した。

団長の話は続いている。

「普通の戦いならば、俺たちは必ず勝つだろう。だが、城を出る前にも話したとおり、奴らはあの塔で何か厄介なことを始めようとしているらしい」

その話はトッシュも覚えていた。
なんでも、完全なる秩序を一気に実現できる秘儀だという。あまりに荒唐無稽で、正直、ピンと来ない話だったが、最近仲間になった元≪オルダ≫柱団長であるカロンによれば、≪オルダ≫の最高幹部は秘儀を本気で信じており実行に移すつもりらしい。アンヴァリン族のミリアドスが率いる偵察隊が、総長の動きや物流の動きからそれがかなり近い時期――早ければ今日にでも――行われるようだと報告をしてきたのだ。

秘儀とやらが本当に完全なる秩序を実現できるのか、その真偽は不明だ。
ただ、≪オルダ≫は人の感情も自由意志も認めない。全ての出来事が定められたとおりに進む世界こそ理想だと堂々と宣言している。もしその秘儀によってこの世界をそんな風に変えてしまえるとしたら……考えるだけで恐ろしいことだ。

「本当にそんなことが可能なのか、可能だとしたらどんな方法なのか、残念ながら何もわかっていない。これも奴等の妄想にすぎないのかもしれない。しかし、少しでも危険がある以上、その秘儀とやらを何としても阻止しなければならない!」

トッシュが今考えたことを団長が口にする。
既に城で一度聞いた話でもあり、その時にも同じ結論になった。
皆は口々に同意の声を上げ、団長に応えた。

「こんな不確かな情報だけで戦わなければならないのは、申し訳ないと思う……。だが、これ以上待ってはいられない! 奴等が何かを始める前に叩くっ!!」
「わかってるぜ!」
「どうせ奴らとはケリをつけなきゃならないんだからさ!」
「……ありがとう」
仲間たちの同意に微笑を返して、団長は少し後ろに下がった。

代わって、軍師を務める魔道士が進み出た。団長とは≪星の兵団≫が出来る前からの友人であり、団長との付き合いが最も長い一人だが、それだけで軍師になっているわけではないことはこの場にいる誰もが知っている。
高い知識を有するスクライブ一族、その中でもとりわけ高い頭脳を持つのが彼だ。一族からの追放者を意味する烙印を身に纏っているが、その事実はいささかも彼を損なわない。許される以上の知識を得ようとした結果であり、一族の長しか知らないことまで彼の頭には入っているという。

「作戦は城を出る前に説明したとおりだ。全軍を第一陣と第二陣に分ける。各々、自分の属する隊を把握しているな」

皆が頷きを返す。
トッシュも頷いた。自分は第一陣のシャリヤル隊だ。

「今回の作戦は単純だから繰り返すまでもないが、確認する。まず、第一陣が塔の守備隊に攻勢をかけ、防衛線に穴を空ける。第二陣はその突破口から塔に突入、上階を目指す。第一陣も守備隊を掃討した後、余力があれば第二陣に続く」

軍師は淡々と説明を続けた。

「塔の入口は全部で12あることが分かっている。そのうちのどこから入るかは各隊の判断に任せるが、第二陣はなるべく均等に散ってくれ。どれかは本命に通じているだろう」
「入口上部に旗を刺すことで突入した合図とするんだったな」
「そうだ。ほとんど同時に突入することになりそうだから分かると思うが、念のためにな。渡した旗はどんな硬い石壁でも突き刺せるはずだが、万が一術がかけられていてそれが出来ない場合には入口前の地面に刺す」

第二陣の面々が手にした旗を見下ろした。
職人町の鍛冶職人たちが作った特性の旗だ。手のひらに乗るほどの小さな物だが、本拠地の城で軍師が軽く投げてみせたところ、石の壁にやすやすと突き刺さった。

「塔の最高幹部を発見したら、直ちに討つ。完全なる秩序を実現する秘儀とやらを確認したら、阻止する。……以上だ」
あっさりと説明し終えた軍師は皆を見回した。
質問があれば答えるという意味だが、こんな単純な作戦に質問を抱く者はいない。
そもそも大枠だけを示し、あとは現場の判断によって目標を達成するのが≪星の兵団≫の戦い方だ。
「早い者勝ちだな!」
「面白い!」
お互いに顔を合わせ、笑ったり拳を合わせたりして闘志を高めあっていた。

「――団長殿」

その中で、精悍な面構えの男が軽く手を挙げた。
「ひとつ、提案があるのだが」
低いながらもよく通る声。ざわめいていた仲間たちは、発言した者を探してあたりを見回した後、それがシャリヤルであることに気付くと次第に静かになっていった。
砂漠の民クドラト出身の魔道剣士であるシャリヤルは、剣技、魔道力もさることながら、冷静な判断力を持っていることでも皆から一目置かれている。≪星の兵団≫の幹部の一人であり、今も104人の中では最前列中央に立っていた。
しかし、幹部であるということはこの作戦を立てる軍議にも参加していたということだ。一瞬不思議そうな表情になった団長だが、すぐに「聞こう」と前に進み出た。

「俺からの提案だ。団長殿ら4人は、第三陣として一番最後に出陣すべきだと思う」
「なに?」

4人とは勿論、今高台に立っている団長と軍師、それに彼らと常に行動を共にする女剣士、拳闘士のこと。
彼らこそ≪星の兵団≫の中核であると、仲間たち全員が認めている存在だ。
108人はそれぞれが一騎当千、だがこの4人に関してはさらに他の者を圧するほどの力を持っている。
しかし、彼らは皆の後ろに隠れている総大将ではない。これまでの戦いでも常に先頭に立ち、前線から戦況を有利に引っ張って来たのだ。だから大事な戦いである今回でも先陣を切るものだと誰もが当たり前のように認識していた。
団長とてそのつもりだっただろう。

「理由は?」
「切り札になってもらいたい」

端的に答えて、シャリヤルは続けた。

「第一陣は勿論、第二陣も塔を登る途中で消耗するだろう。その先に、疲れた身では手に負えぬ強敵が待ち構えておるやもしれん。ならば、切り札は温存しておくべきではないか?」
「いや、それはダメだ」
即答すると、団長は真剣な顔になった。
「確かに、どんな状況になるのか読めない。だが、状況が読めないからこそ、俺たちは先頭に立つ。皆を捨て石にするようなマネは出来ないし、するつもりもない」
団長の反論に、女剣士と拳闘士も頷いた。

「そうか」
「そうだ」

頷く団長を眺めると、シャリヤルは突然ニヤリと笑った。
人の悪い笑みを浮かべたまま、団長の横に視線を移す。

「――だそうだぞ? どうする、軍師殿」
「困るな、シャリヤル殿。内幕をバラされては」
名指しで問いかけられて、それまでずっと無表情だった軍師が初めて苦笑した。
「それは悪かった。俺は隠し事が出来ぬ性分でな。分かっているだろう?」
「まあな、想定の範囲内ではある」

ニヤニヤと笑っているシャリヤルと苦笑を浮かべた軍師を見比べた団長は「どういうことだ?」と首を傾げた。
「つまり、これは私からの提案だ」
「えっ、お前の?」
「ただ、私から言っては角が立つゆえ、シャリヤル殿に代弁していただいたのだよ」
「角が立たぬようにな」
悪びれもせずにしゃあしゃあと答える2人の顔を、団長は交互に見た。明らかに困惑が浮かんでいる。

軍師が『角が立つ』と言った理由は明らかだ。最後に回る4人の中には自分が入っているのだから、軍師自身の口からは言い出しにくかったのだろう。
だが、本心では団長は最後に回るべきだと考えていたのだ。
それが団長を戸惑わせていた。なぜなら――これまで、軍師の策が間違っていたことはない。
10年を超える≪星の兵団≫の活動の中で、それこそ、1度だって。

「団長も本当は分かっているのだろう? これが最善であると」
団長の戸惑いを理解している軍師は、確信のこもった声で団長に迫る。
「し、しかし……」
返す声に力がないのは、軍師の指摘を認めたも同然だ。

シャリヤルが再び手を挙げた。
「言わせてもらうが、俺も同意見だ。でもなければ、頼まれようと代わりになど言わん」
シャリヤルの両脇にいた2人も手を挙げる。
「僕も賛成だね。軍議の時にも言いたかったけど、団長さんが張り切ってたから言えなかったんだ。でも今回に限っては、君たちは最後に行くべきだと思うよ」
「わしも同意見じゃな。英雄殿はもっとわしらを頼ってくれて良い」
「シャリヤル、キャリオ、メドガ族長……」
困惑した表情のまま、団長が顔を上げる。しかし、見回した仲間たちは皆シャリヤルの意見に同意する表情を浮かべていた。

「わたくしも賛成です。団長殿は我ら≪星の兵団≫の精神的支柱。決戦の場において、その支柱が背後にあることは我らを力づけてくれるでしょう」
自身もマガラ軽騎兵団の精神的支柱であるユノ姫が声を上げると
「私もだ。団長殿の歩く道、我がレオノス王国が≪オルダ≫の雑兵一匹残っておらぬものにしてくれよう!」
レオノスの若き国王ジェマイアが叫び、レオノス守護騎士団が御意!と声を揃えた。

仲間たちの中から賛成の声が次々に上がる。
「真打ちは最後に決まってんじゃねえか!」
ガレガドが叫ぶと、なぜかジェマイアが「その通りだガレガド!」と律儀に返事を寄越してきた。

皆からの賛意を背に受けて、シャリヤルは団長を見上げて不敵な笑みを浮かべた。
「皆も俺たちと同意見のようだが」
「シャリヤル……」
「第一、捨て石とは心外だぞ。俺たちは当然、団長殿らが来る前に決着をつけるつもりで戦うのだからな」

この言葉が最後の一押しとなった。
しばらく瞑目した団長は、やがて振り返ると女剣士、拳闘士と目を合わせて頷き合った。
最後に軍師へと顔を向ける。
「お前も、これが最良だと考えているんだな」
「ああ」
「……よし」
団長は皆へ向き合うと、すうと息を吸い込んだ。
「皆の意見、よく分かった。俺たちは、第三陣として最後に出る!」
その決定を皆の大歓声が迎えた。

これでもう、作戦に関して何の憂いも残っていない。
団長は完全に迷いを振り切った顔を上げた。いよいよ、出撃の時だ。

「行くぞ!! みんなっ!!」
「おおおおおおお!!!」

「我等に! 勝利を!!」

女剣士と拳闘士の合図に続いて。

「我等にぃ!! 勝利をぉーーっっ!!」

全員が拳を突き上げ、叫ぶ。
雄叫びが野営地の丘全体に響きわたった。
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2012/03/26 14:12 | Comments(0) | 二次創作

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