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2024/05/17 20:29 |
何となく書いてみた
前からちょろっと思ってたんですけどね。
星屑を自分で書いてみたらどうなるかなー、と。
FLASH小説の内容を全部盛り込んで、自分設定をちょっと追加して(せざるを得ない)、名前のない108星に名前つけて(つけざるを得ない)、自分なりに星屑の小説を完成させてみたいなー、と。

…めちゃくちゃ長くなりそうだなー、と(笑)。

先に書きたいことがたくさんあるのに書けてないので実現しないかもしれない。
というか、現実的に厳しいと思ったから裏側シリーズを思いついたのにそれも完成できてないという有様なのですが。

とりあえず無料配信されている1章の中から、プロローグ部分のみ書いてみました。



―― プロローグ ――

彼に出来ることは、呼吸をすることだけだった。
小さく浅い息を繰り返す。その間隔が徐々に開いていく。意識しなければすぐに止まってしまいそうだ。
息を吐き出せば吐き出したで、そのたびに命の残り火が少しずつ抜けて行くのを感じていた。

彼の身体は、冷たい石の床に横たわっている。――はずだ。
自分がどんな格好をしているのか、自分の手足がどうなっているのか分からない。
分かっているのは、指の一本ですら、もう自分の意思で動かすことは出来ないということ。
深傷をいくつも負っているはずだが、その痛みも感じることが出来なくなっていた。

「(……もう、長くはない)」

闇に沈みそうな意識の中で、トッシュは小さく呟いた。
まだ十数年しか生きていないが、彼の戦歴は年齢に比例していない。死線は何度もくぐり抜けている。
だから、彼は自分の置かれている状況を正確に把握していた。
どんな回復魔道を使っても癒すことが出来ないほどの重傷を負った。
この身は、間もなくただの骸と成り果てるだろう。
自分の周囲に折り重なって倒れている、仲間たちと同じように。

トッシュが倒れている円堂には100人を超す仲間たちの死体が転がっている。
ある者は壁に叩きつけられ、ある者は床に崩れ落ち、それが重なり合って山のようになっているところもあった。
その全員が、大切な友であり、この世界に108人だけ存在する同志だった。
トッシュが仲間に加わったのは数年前だが、それから共に笑い、共に怒り、同じ目的の下に共に戦ってきた。
彼らの笑顔も怒号も、戦いに臨む勇ましい瞳も、まるで自分のもののように身体に刻まれている。
ほんの数時間前には、この塔の前に全員が集まり、勝利を誓い合ったのだ。

だが、その勝利の誓いは果たされないまま、全てが終わろうとしている。
勝利を喜ぶどころか、もう彼らは笑うことも、怒ることも、立ち上がって戦うこともない。
トッシュは、彼らと同じ道を少し遅れて辿るだけだ。

呼吸が浅い。自分が息をしているのかも分からなくなってきた。
”その時”が来たのか、と思う。この円堂に転がる104番目の死体になる時が――

「(――まだだ)」

トッシュは薄れ行こうとする意識を必死に押しとどめた。
死ぬことは避けられない。残された時間がほとんどないことも分かっている。

「(だけど、まだだ。まだ、終わってない……!)」

たとえ体は動かないとしても、消えかけている命だとしても――それでも命がある限り、事切れる最後の瞬間まで見届けなければならないものがある。
トッシュは、かすむ目に残された気力の全てを注ぎ込むと、円堂の中心に無理やり焦点を合わせた。

そこに立っているのは、4人の戦士だった。
彼らと対峙している者は視界に入らなかったが、そちらを見る必要はない。
トッシュらを一蹴し、108人の仲間のうち103人を――もうすぐ104人になるが――骸へと変えたものが、最後に見た姿のまま悠然と立っているのだろう。
4人は、倒れているトッシュを一顧だにしなかった。
彼らの横顔には恐ろしいほどの気迫が浮かび、武器を構えた身体からは研ぎ澄まされた気が放たれている。そこに、諦めや絶望は認められない。

彼らこそ、トッシュらの最後の切り札だ。
≪星の兵団≫が誇る最強の4人――団長と、その側近である魔導師、拳闘士、女剣士。
108人の中でも飛び抜けて強い彼らが、五体満足のまま、あれほどの気迫をみなぎらせて立っている。
トッシュに視線を向けていなくても、104人の仲間の想いを背負っていることは彼らの表情から伝わってきた。

「(だから、きっと……示してくれる)」

トッシュにとって、それは祈りでも願望でもなく、ただの確信だ。
数年前に初めて出会った時から団長はトッシュにとって常に導となる存在だった。
あの4人が負けることはない。そして、散っていった自分たちに示してくれるだろう。
この戦いは、ムダではなかったのだと。
自分たちの死は、犬死にではないのだと。

そして、”あれ”に示してくれるだろう。
未来は、決まってなどいないのだと――

トッシュには、彼らと共に戦うことができないのを悔やむほどの余力は残されていない。
ただひたすら、自分に許された唯一の行為に集中していた。
――ただ、見ていること。
それしか出来ないのであれば、団長たちの戦いを最後まで見届けたい。

トッシュの視線の先で、4人のうちの1人が腰を落とした。
足を踏み出す。まっすぐに目の前を睨みつけながら、右手を大きく横に出す。そこに左手が添えられる。
≪星の兵団≫を率いる団長――この世界で英雄と呼ばれている人の剣が、光の弧を描いた。

「(……始まった)」





彼は気付かなかったが、4人の攻撃はトッシュが床に叩きつけられると同時に始まっていた。
相手からすれば1つの戦いと感じられるだろう。
団長たち4人の戦いではなく、108人による1つの戦い。

――それが、この世界における最後の戦いだった。
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2012/03/25 01:11 | Comments(0) | 二次創作

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