一応今回はここまで。
相変わらず場所はトラン。
坊(レン)、ゲオルグ、5主(セイリーク)、リオンで。
相変わらず場所はトラン。
坊(レン)、ゲオルグ、5主(セイリーク)、リオンで。
「―――…ゲオルグ!!!!」
”完全防音”の小部屋へと案内され、「ごゆっくり」と意味深な笑みを残してレンが立ち去った瞬間、セイリークは大声を上げてゲオルグに体当たりした。ついでに怒涛のパンチ付きだ。
どどどどど。
ぼこっ。
一発命中。
「なんで!?ここで何してるんだ!?すっっっ…ごく探してたのに!!!」
「そうですよゲオルグ様!あれから一度も顔を見せてくださらないなんて!」
「ずっとトランにいたの!?いつ訪ねてくれるかと待ってたんだぞ!」
どどどどど。相変わらず連打は続いている。ゲオルグは必死でそれを防いでいたが、ぼこっと音がして思わずぐっと声が漏れた。
二発目命中。
「セイ……ちょっと待て」
「会いたかったのにー!!」
「まずは手を収めろ!」
顔面を狙った強烈なパンチを渾身の力をこめて受け止める。
ぐぐ、とその手を力技で押し下げると、その向こうから青い瞳が現れた。
12年前とまるで変わらない、澄んだ力強い瞳がきっと自分を見つめている。
ふっと笑いのような息が漏れた。
「――久しぶりだな、セイ。元気そうだ」
「~~ッッ!!」
途端に拳から力が抜ける。
ふにゃりと顔が崩れかけたのを見て苦笑すると、銀色に光る頭の上にぽんと手を置いた。
「でかくなったな。それに立派になった」
「うー…」
「連絡もせずに悪かったな」
「……ほんとだよっ!」
拳は収めたものの、思い切り顔をしかめて膨れるセイリークに苦笑するしかない。
少し離れた場所ではリオンがそんなセイリークをやはり苦笑しつつ見守っていた。
片手を銀髪の上に置いたまま、ゲオルグはそちらを見やる。
「リオンも元気そうだな」
「はい。ゲオルグ様もお元気そうで、安心しました」
「相変わらずセイの護衛をやっているのか?」
「いまさら他の方に譲る気はありません。…もっとも、王子は護衛など必要ないほどお強いので、今の私はただの侍従ですが」
「いや、そんなことはないよ。リオンがいなかったらここまでの道のりももっと苦労した」
「そうですか…?」
「うん。いつもありがとう」
二人顔を見合わせてにこりと笑いあう。
昔と変わらない光景にゲオルグの顔にも自然と笑みが浮かんできた。
「お前達……相変わらずなのか?」
「相変わらずって?」
「いや……」
恋人になっているとか、結婚しているとか、そんなことになっていないのかと思ったのだが。
何と口に出していいか分からずに誤魔化していると、セイリークがにこりと笑った。
「何を言いたいかは予想がつくけど。リオンと僕は家族なんだ、他の関係にはならないよ」
「家族にもいろいろあるだろう?」
「僕たちは2人とも父上の子供なんだよ」
そう言って振り返ると、背後でリオンが頷いた。
以前は見たことがないほど柔らかい笑顔。
「…覚えてる?ゲオルグもいた頃だと思うけど。父上がリオンに向かって『わが子の心配をしない親がどこにいる!』って言ったこと」
「……嬉しかったです」
ゲオルグが知っているリオンなら『そんなこと!』と思い切り謙遜しそうな場面だったが、今のリオンはただ嬉しそうに微笑んでいるだけだ。
きっと、セイリークが何度も言ったのだろう。
家族というものを知らなかったリオンに与えられた、親の愛。兄弟の愛。
リオンがここにいるのはセイリークを守るという使命のためだけではない、家族だからこそ、ここにいていいのだと。身をもって何度も教えたのだろう。
……この2人には、恋人というものよりも何よりも”家族”が必要だったのかもしれない。
ほのぼのとした空気が漂ったところで、部屋のドアがノックされた。
途端に3人の顔つきが変わる。
ゲオルグとリオンは無言でさっとそれぞれ部屋の隅へと下がり、”女王騎士長”の顔になったセイリークが「どうぞ」とよく通る声を出した。
ひょこり、と顔を出したのは先ほど部屋を出て行ったレンだった。
きょろ、とあたりを見回してゲオルグを見つけると「あれ」と首を傾げる。
一瞬ためらう素振りを見せたが、そのまま部屋へと入ってきた。
右手に飲み物と軽食を持ったトレーを持っているのはまだ分かるが……左手に持っている何やら大きめの箱が気になる。
「レン」
「何でしょう」
「…何を持ってきた?」
部屋の片隅に置いてあったテーブルの上に両手に持っていたものをさっと並べると、レンは微苦笑を浮かべてゲオルグを見つめた。
だが問いには答えず、セイリークを見やると笑顔で礼をした。
「申し訳ありません、貴方のことを見誤りました」
「…え?」
「きっと今頃ゲオルグ殿は怪我を負っていると思ったのですが。当然ですが私と貴方は違いましたね。早計でした」
「え…??」
きょとんとしているセイリークとリオンを見て、レンは唐突に満面の笑顔を見せた。
今まで見せていた余所行きの笑みではなく、少し悪戯っ気のある少年のような笑み。
「私は突然連絡を断ってふらふらしていた仲間のことを、思い切り殴り飛ばしたんです」
しーん、と。
思わず沈黙してしまった部屋の空気を最初に破ったのはゲオルグの笑い声だった。
「はっ…。ははは!」
「ゲオルグ殿は幸運ですね。不義理をした相手が僕ではなくセイリーク閣下で」
「は……全くだ。だから救急箱なんぞ持ってきたんだな」
「ええ。てっきり殴り飛ばされているかと思いましたので」
ここに至ってようやくセイリークもゲオルグが笑った理由を悟り、さっと赤面した。
「マクドール殿……申し訳ないが、貴方は私が何を思っていたのかお見通しだったのですか」
「身に覚えのある目つきをしてらっしゃると思ったまで。…失礼をいたしました、己が未熟であることを忘れておりました」
「いえ、とんでもない。実際殴りかかろうとはしたのですが、お恥ずかしながら受け止められてしまいました」
「ほう。ではお手伝いいたしましょうか。私がゲオルグ殿を抑えておきましょう」
「いいですね」
急に打ち解けて親しく話し出したレンとセイリークだが、会話の中身は物騒この上ない。
では、とレンが本当にゲオルグを羽交い絞めにしたところでリオンが慌てて割って入った。
話的にはもう少し書いたのですが、キリがいいのでここまで。
レンが殴りかかったのは、当然のことながらビクトールとフリック(笑)。
そしてうちの王子とリオンは恋人にはなりません。……2人とも結婚しなさそうだな(苦笑)
確か女王騎士長ではなく女王騎士長代行だったかと思うのですが、まあ他国の人にいちいち説明するのは面倒なのでこれで。
12年後までリムは結婚してないのかって感じですが、結婚直前と思ってくださいまし。
……本当は、劇団も出てくるはずだったんですがさすがに余裕がなかった。ごめんロイ(笑)
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