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閑話休題
タイトルの通り、閑話休題。
ふと思いついた代物です。

2時代で、5との共演。

レン(坊)、イリク(2主)、山賊3人、+α

※5のネタバレがもろに入ってますのでお気をつけください







「祭り?」
「うん、最近はちょっと落ち着いてるしさ、皆の慰労もかねてパーっとやりたいんだ」

城のテラス。同盟軍の本拠地でありながらそうとは思えないほどのどかな日差しを浴びながら、軍主は友人達の顔をながめてにょほほんとした笑みを見せた。

「それで僕達に相談というのは?」
「出し物がさ、少ないんだ。アイリ達の大道芸に、アンネリー達のバンド……コボルトが踊ってくれるというんだけど、あと一つ。ちょっとインパクトを出したい」
「それで?」
「劇団がいるといいなあって…。トランになかったっけ?」

イリクの問いに対して、レンが即座に頷きを返した。思案するように隣りを見やる。

「確かチャップマンがしばい小屋を立ち上げたと聞いたが?」
「ああ、つーかありゃ立派な劇団だぜ。戦争で散り散りになった役者をうまいこと集めたらしい」

レンの視線を受けて頷いたのはシーナ。
戦後国を離れたレンよりもトランの世情に関してはシーナの方が詳しい。

「赤月で一番だった劇団員を引っこ抜いたらしいぜ。そいつについてた固定客がそのまま流れてきて大繁盛。グレッグミンスターでの公演がこないだ終わったらしいが大盛況だったとさ」
「詳しいな?」
「美人の団員がいるんだよ。惜しいことに彼女もその役者のファンだっていうけど。惜しいことに」
「繰り返すな。へえ、そんなにすごいのか」
「英雄譚をやらせりゃ大陸一だってよ。俺にゃ分からねーが、確かに雰囲気はあるな」
「……見てみたいなー。レン、シーナ、その劇団呼べない?」
「んー、次の公演はまだちょっと先みたいだから話は出来ると思うけど?」
「僕がチャップマンに話をつけてみよう」
「レンから話を通せば確実だと思うぜ」



解放軍時代には防具屋を営んでいたチャップマンは、戦後に職を失って劇団運営に転向していたとはいえ、かつて優遇してくれた軍主に対する情熱は失っていなかった。当然のことながら直々に話を受けた彼は感激し、「無理でなければでいいんだが…」と切り出したレンに対して二つ返事でデュナンに赴くことを承知したのだった。

「で、演目は何を?」
「戦時中なら士気が上がるものがいいでしょう。うちの十八番が英雄譚なんですよ。他国のものですがね、うちの者が最高の演技をするんです。レン様にも是非お目にかけたい!」
「それは楽しみだな」





そして祭りの始まる3日前。
チャップマン率いるその劇団がデュナンのほうざん城に到着した。




「へえ、でっけーなあ」
「ねえねえ、ちょっとこの雰囲気、思い出さない?」
「馬っ鹿、一緒にすんじゃねーよ。あっちの方がずっと綺麗だったって」
「馬鹿!そんなこと大きな声で言わないでよ!」
「ここで演るのかあ。楽しみだなー」

城の入り口、門番と話をしているチャップマンの少し後ろで劇団員達から少し離れて会話をする3人がいた。
中央にいるのはすらりとした長身の青年だった。腰ほどもある長い髪を後ろで緩く束ねている。端正に整った顔には皮肉げな笑みが浮かんでいたが、遠巻きに彼を指さしてきゃっきゃと騒いでいる女性を見ると爽やかな笑顔に変えてひらりと手を振ってみせた。きゃーーっと黄色い声が上がる。
並んで立っていた女性は、これまたすらりとした長身で、細い手足を惜しげもなくさらけ出していたが、満足そうに頷いた青年を見やるとわざとらしく肩をすくめてみせた。

「まーたやってる。こんなエセ笑顔のどこがいいんだか」
「気品溢れる王族の笑顔ってやつだぞ?」
「あーはいはいはい。そうだよねー」
「何だよそのやる気のない相槌は!」
「キャラじゃないって言ってんの。あーほら、団長が呼んでるよ」
「そばに誰かいるね。あれが噂の少年軍主ってやつじゃないのかな?」
「うわ。マジでちっせーなあ。王子さんよりちっさいんじゃねえ?」
「……2人いるけど?」
「影武者?」
「だとしたらうまくねーな。やっぱ俺ほどの人間じゃないと!」
「分かったからさっさと行ってきな、ロイ!!」
「あ、俺も見たいから一緒に行くよー」
「あ、ちょっと兄貴!……もー、あたしも行くーーー!」



レンとイリクは、チャップマンと話をしながら近づいてくる3人を見ていた。
一番身長の高い男性が、彼の言う"花形役者"なのだろう。傍らの2人と気安げに話しながら、時折女性の頭をこづいてからかったりしている。
2人の視線を追ってチャップマンも3人を見る。

「あ、あの2人は彼とずっと一緒にいるんですよ。幼馴染ってやつですかね。2人とも裏方だったんですが、妹の方は最近では役者もやってもらってます。あれで腕が立つんで、武家の娘などをやらせると迫力があるんですよ」
「兄の方も腕に覚えがありそうだが?」
「さすがレン様、お分かりになりますか。ええ、なんでも3人とも異国で前線に立った経験があるらしく」
「ほう」
「それにしても、目立ちますねー。あの主役の人、元からあの髪の色なんですか?」

イリクが感心したように尋ねた時、3人がチャップマンの横に並んだ。
束ねた髪を銀色に揺らし、青年が瞳に楽しげな色を浮かべたまま優雅にお辞儀をする。

「俺のこの髪は染めたものです。今回の公演にあわせましてね。……はじめまして、当劇団をご指名いただきありがとうございます。ロイと申します」
「あっ、フェイレンです!」
「フェイロンです。えっと……軍主様?」

フェイロンと名乗った男が戸惑うようにレンとイリクを交互に見やる。レンがふっと微笑んだ。イリクが慌てたように背筋を伸ばす。

「えっと、ようこそいらっしゃいました!歓迎します。俺がここを守ってるイリクと言います。こちらはトランのレン・マクドールさん」
「レンです。お聞きのように影武者ではありません」

ひどく楽しげな口調に、フェイレンとフェイロンがしまった!というような顔をした。あまりにも分かりやすい。ロイは逆におかしそうに笑った。

「噂に名高いトランの英雄でしたか、これは失礼。演劇馬鹿なもので世情に疎いんですよ。しかし耳がいい」
「たまたま風が流れたんですよ。今日は準備でお忙しい?」
「いや。……団長?」
「今日は荷物を運ぶだけです。夜に打ち合わせをするまでは自由行動ですよ」
「それはいい。ではどうです、城を案内しましょうか」
「あ、それいいね、レン。どうです?ロイさんもフェイレンさんもフェイロンさんも」

3人は一瞬顔を見合わせたが、答えたのはやはりロイだった。

「ご迷惑でなければ、是非」




普段の口調でいいですからねー、とイリクが言って、分かったと応えたのはレンだった。

「……レンに言ったんじゃないんだけど」
「別にいいだろう。お聞きの通り僕の口調はあまり柔らかくない。気にしないでもらえると有難いが」
「気にならねーぜ、別に」
「ちょっ、ロイ!」
「普段の口調でいいって言ってくれたろ?良かったなーフェイレン。ですます口調苦手だもんな、お前」
「ロイ!!!」

顔を真っ赤にしてポカポカ殴るフェイレンを見て、レンとイリクが楽しそうに笑う。
イリクの目には若干の寂しさとうらやましさがにじんでいた。

「仲良いんだね、3人は」
「あ、うん。付き合いだけは長いから。えーっと、最初に会ったのってもう何年前?」
「レインウォールの貧民街でしょ。20年以上前じゃない?」
「20年かあ…。それから乱稜山にファクト城に、赤月に移った後は一度群島諸国にも行ってトランに戻って……結構経つねえ」
「これも腐れ縁だよな。つーか正直お前らがついてくるとは思わなかった」
「あっ何ソレ!ひどいんじゃない!?」

懐かしそうな3人に、やはりイリクはうらやましそう。誰のことを考えているのか分かっているレンはさりげなく話題を変えた。

「役者の前に戦士としても活躍したとか?」
「戦士って、んなガラじゃねえよ」

レンの言葉にロイはぶんぶんと腕を振った。隣りでフェイレンとフェイロンがにやにや笑っている。
「でも前線に立ってたって、あの団長さん言ってたけど?」
イリクの言葉にロイは苦虫を噛み潰したような顔になった。
「べらべらと……。昔の話だよ」
「前線よりは後衛の方が多かったよね」
「ロイは前線だったけどねー」
「目立ってやんぜえ!って船首で叫んでたよね」
「うわフェイロン!」

そんな話をしていたからか、まずレンとイリクがつれていったのは訓練場だった。
祭りの直前とはいえ、ここには違う空気が漂っている。
剣戟と裂帛の声が響いている場内を、3人は興味深そうに覗き込んだ。

「へえ……。こういうのを見ると戦時中だって思い出すな」
「ロイ、さっきから失礼だよ」
「構いませんよ。…ああ、珍しい人がいる」
「誰?あ、ほんとだ珍しい」

レンの影からひょいと頭を覗かせて、イリクが驚きの声を上げた。
騎士達に混ざって、一人、壮年の剣士が進み出たところだった。

「…………え?」
「あれって……」
「まさか……」

3人の口からぽろぽろと疑問の声が零れ落ちる。
イリクが彼らの顔を見ようとした時、一際大きな剣戟が響いた。






一撃で相手の剣を弾き飛ばして相手の喉に剣を突きつけたゲオルグは、相手の戦意が消失したのを見るとさっと剣を引いた。
「出だしが甘いな。左脇に隙がある。だが勢いはいい。最初に左足を少し下げておくとよいだろう」

ハッと我に返った騎士がありがとうございました!と大きな声を上げる。
それに鷹揚に頷きを返すと、ぱちぱちと拍手の音が聞こえてきた。

「お見事、ゲオルグ殿」
「レン、見てたのか。…………ん?」

ゲオルグの視線が、つ、とレンから横へずれる。
その途端、すいとレンの横から人影がすべるように前へ進み出た、と思うとまっすぐゲオルグへと飛び込んでいった。
薄暗い訓練場の中に銀色の残像が走る。


「ゲオルグ…!どこへ行ってたんだ!」
「…………」
「心配していたんだよ!?ああでも良かった、元気そうで…!」
「…………」
「今何してるの?そうだ、一緒に帰ろうよ。リムも会いたがってるんだ!」
「……変わりないようだな、ロイ」
「……ちっ」


突然瞳をきらきらさせて可愛らしくなったかと思うと、またしても突然態度をひるがえして舌打ちをしたロイを見て、イリクは目を白黒させた。
ひゅうっとレンが彼にしては珍しい口笛を吹く。

「なるほど。確かに役者だな」
「…え?なにが起きたの?」

やたら悔しそうなロイを見ながら首をひねるイリクの背後で、フェイレンとフェイロンが盛大に噴出した。





続くかは不明です(笑)
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2006/08/08 16:41 | Comments(0) | TrackBack() | 二次創作

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