TKエンディング後妄想・アストラシア編。
先日の続きです。
なんだかよくわからないまま、結婚させてしまいました。フレデさま暴走の巻。
最終的にアスフレになります。あと1回つづきます。
妄想の延長のようなもので、お話の体裁としては微妙ですが、どぞ。
先日の続きです。
なんだかよくわからないまま、結婚させてしまいました。フレデさま暴走の巻。
最終的にアスフレになります。あと1回つづきます。
妄想の延長のようなもので、お話の体裁としては微妙ですが、どぞ。
「えええええええっ!!!????」
その話を聞いて出来る反応など、身体を仰け反らせて叫ぶことくらいしかないだろう。
姉の部屋へ乗り込んでいった時と同じ勢いでやって来たフレデグンドから投げつけられた爆弾発言に、アスアドは後ろへよろけ、結果として廊下の壁に頭をぶつけた。
「け、結婚!? 俺とフレデグンド様が…ですか!?」
「お姉様ったらご自分の心に鈍感すぎます! ご自分の気持ちを気づかせるにはこのくらいする必要があるのです!!」
フレデグンドは、アスアドが下がった分を詰め寄ると、胸元をぐいと掴んで引き上げた。
喉をしめられる格好になったアスアドが喉の奥で唸るが、まったく構う様子はない。
ぎんと睨みつけてくる目は完全に据わっている。
とても求婚の台詞を吐いているようには見えず、実際はたから見ればまるっきりカツアゲされているようにしか見えなかった。
喉をしめられ苦しそうな表情になったアスアドだったが、苦しい体勢になりつつも首を傾げた。
「フレデグンド様は……お二人の結婚に反対なのですか?」
「当然です!」
フレデグンドは手を離すと、どんと目の前の身体を突き飛ばす。
アスアドは再び後頭部を壁にぶつけた後、胸に手をやって大きく息を吸い込んだ。
「ご結婚なさること自体に反対はしません。お姉様が愛していらっしゃるのでさえあれば、相手はメルヴィスでもグントラムでも」 きっとアスアドを睨む。「イヌでも我慢しますわ」
「い、イヌですか…?」
「大体あなたは我慢できますの!? あの二人にあるのは信頼関係です。それだけです! 結婚は契約のひとつですが、義務でするものじゃありませんわ! そう思いませんか?」
「は、はあ」
「あなたも不甲斐ない! 真実お姉様を想うのであれば、名乗りを上げたらいかがです。我が国まで来るくらいなら…!」
「し、しかし……」
「まったく不甲斐ない!!」
反論の言葉は容赦なく叩き斬られた。
大きく首を振ったフレデグンドは、さらりと流れる髪の間からアスアドを睨みつけた。
「とりあえず既成事実を作りますわ。さすがのお姉様も、焦らずにはいられないでしょう」
「はああっ!? フ、フレデグンド様!? 落ち着いてください、ご自分が何を仰ってるのか分かって……」
「お黙りなさい!!」
アスアドの視界からフレデグンドが消える。
身をかがめたのだと気づくよりも早く、みぞおちに強烈な一撃を覚えた。
「ぐ…っ!?」
ふわり、と金色の髪がやけにゆっくり目の前を通り過ぎる。
視界が急速に暗くなっていく。
足から力が抜けていくのが自分でも分かる。
身体が床に崩れ落ちる寸前、華奢な肩が自分の身体を支えるのを感じた。
「あなたのためでもありますのよ」
「……な……」
反論の言葉は、最後まで口にすることができなかった。
フレデグンドは、完全に意識を失ったアスアドの身体をしばらく支えていたが、やがて小さなかけ声と共にひょいと肩の上にかつぎ上げた。
いくらアスアドでもそれなりに重いはずだが、アストラシアの剣士にとっては問題にならないらしい。
フレデグンドはちらりと廊下の先に目をやる。野次馬が慌てて頭を引っ込めるのを確認してフンと小さく鼻を鳴らすと、アスアドを担いだまますたすたと廊下を歩き出した。
***************
翌朝、まだ日も昇らない早朝に目を覚ましたアスアドは、自分がどこにいるのかを悟ると真っ青になった。
見覚えのある内装ではない。
だが、すぐ隣ですよすよと安らかな寝息を立てている顔を見れば、ここがどこかは一目瞭然だ。
廊下から部屋まで、まさかフレデグンドが一人で運んだのだろうか。
鳩尾に拳をくらって気絶する自分も人並み以上に情けないが、成人男性をかついで移動できるフレデグンドも人並み以上に力がある。見た目は華奢だが、さすがアストラシアの王家と言うべきか。
「(って、感心している場合じゃない)」
自分の身体を見下ろし、服を着ていることにほっと安堵の息を吐く。
恐る恐る隣の布団をめくってみて、フレデグンドもきっちり服を着ていることに胸を撫で下ろした。
「(……とりあえず、貞操は守られたか)」
そう考えてから思わず頭を抱えてしまった。男が抱く感想としてはあまりにも情けない。
何がどうしてこうなっているのかさっぱり分からないが、ともかくこれ以上ここにいることは危険だ。
誰かに見られようものなら、たとえ服を着ていたとしても言い訳のしようがない。
なるべく音を立てないようにベッドを抜け出そうとしたが、そこでアスアドの身体が硬直した。
アスアドの右手首を掴んだフレデグンドが、小さな声で呼んだ。
「…ね…さま……」
「(……寝ぼけてらっしゃる?)」
思わず顔を覗き込んだアスアドは、慌てて目を逸らした。
閉じた瞼の端から涙が一筋流れている。
「…さまは、しあ…せに、ならなきゃ……」
途切れ途切れにフレデグンドが呟く。
掴まれた右手の上に、ぽたりと涙が一しずく落ちた。
「わたくしは…おねえさまに、しあわせになっていただきたいんです。それだけなんです」
「……フレデグンド様」
「それだけ、…なんです」
身動きの取れないまま、アスアドは天井を仰いだ。
先ほどまで感じていた焦りや、ほんのわずかの怒りが戸惑いにとって変わられていく。
フレデグンドの行動の理由は、改めて考えてもさっぱり分からない。
クロデキルドの結婚を思いとどまらせるのに、どうして自分との結婚という展開になるのか。
どうしてこんな無茶苦茶な行動を取るのか。
「おね…さま…」
分からないけれど、行動の根っこにある想いは悲しいほど純粋なのだ。
掴まれているのと逆の手を伸ばして頬の涙をぬぐう。
柔らかな金髪をそっとなでると、瞼を閉じたまま、フレデグンドが子供のような笑みを浮かべた。
***************
アスアドは結局、人目のつかない夜明け前に逃げ出すことに失敗した。
とはいえ、その前日にフレデグンドが力技で気絶させていたところを数人に見られていたことが幸いして、「陛下の結婚に動揺した2人が何か言い争い、アスアド殿が負けた(=やっぱり魔道士は力がねえなー)」 という微妙に不名誉な噂が立ったのみで、アスアドが危惧するような展開にはならなかった。
だが、それから月日経ち、クロデキルドとメルヴィスの婚儀が無事に終了した後。
深酒しすぎて悪酔いし、からんだ挙句に眠ってしまったフレデグンドをアスアドが部屋まで運び、朝まで帰ってこなかったという事件が起きた。
フレデグンドが服を掴んだまま離さず、力が抜けるのを待つうちにうっかりうとうとしてしまったのが真実だが、2度目の噂は2度目ということもあって城内をまことしやかに駆け巡り、クロデキルドの耳にも入った。
そして、なんのかんの言っているうちに結婚することになってしまった。
それを聞いた各方面の反応。
●本拠地・シトロ
リードァ 「へえ、めでてえこと続きだな」
リウ 「リードァ……」
マリカ 「いつの間に!? 何がどうなってるわけ?」
ジェイル 「…さあな」
●本拠地・エントランス
モアナ 「なになに、どーゆーことっ!?」
ホツバ 「男女の仲は分からないでやすからねえ……」
モアナ 「それにしたって、あの2人だよ!? まさか、お互いにクロデキルドさんの代わりなんて…」
ホツバ 「うーーむ、ありえない話じゃないでやすねえ」
モアナ 「これは調査しなくちゃだねえ♪」
●サルサビル・王宮
シャムス 「どうしよう、お祝いを送っていいのかな」
タージ 「送らない方が失礼にあたりますが……」
シャムス 「そ、そうだね。おめでたい…ん、だよね?」
タージ 「あの方の本心は伺っておりませんので分かりませんが、おめでたいことは確かです」
シャムス 「うん。……それにしても、彼は何をしにアストラシアまで行ったんだ」
●サルサビル・城下
ナキル 「何やってるんスかアスアド様ーーー!!!」
ルバイス 「クロデキルドさんの結婚から間を置かずに決まったというのが意味深ですね」
ナキル 「はあ。相当こたえたんスかねえ……」
●ファラモン・騎士団
キラルド 「……は?(鳩が豆鉄砲を食らったような顔)」
アマラリク 「良縁だと思うよ。それにしても、噂を聞いた時にはまさかと思ったけど……」
キラルド 「いい加減な気持ちでフレデグンド様の気持ちを弄んでたりしたら、許さない…!!」
●ふたたび本拠地
モアナ 「団長さん団長さん! 仕事やんないっ?」
リードァ 「なんだあ? 『結婚の真相が知りたい』?」
モアナ 「ロベルトくんなんか適任じゃないかなあーって思うんだけど」
リードァ 「えーっと……まあ、いっかあ。んじゃロベルトに頼んどくか」
●そしてファラモン・城内
ロベルト 「アスアド殿!」
アスアド 「あ、ロベルト殿? 突然帰られるとは何があっ…………」
ロベルト 「逃げないでください!(がしっ) ご推察の通りあなたに聞きたいことがあるんですよ」
アスアド 「やっぱり……」
ロベルト 「何やってるんですかあなたは!?」
アスアド 「俺にだって、何がなんだかわからないんだ……」
ロベルト 「……そんな情けない顔をしないでください。いちおう王家の人間なんですから」
アスアド 「お、俺が王家……? いや、」
ロベルト 「分かってますよ。フレデグンド様が一市民であることをお選びになっているから、正式に王家に入っているわけじゃない。でも陛下の妹であることに変わりはないし、あなたはその夫だ」
アスアド 「………………」
ロベルト 「なんです?」
アスアド 「……どうして、こうなったんだ……?」
ロベルト 「……皆がそれを知りたがってるんですが。同じ依頼が何件来てると思います?」
アスアド 「聞きたくない……全部ノーコメントで」
ロベルト 「まあ、いいですけどね」
アスアド 「すまない…」
ロベルト 「ああでも、アスアド殿」
アスアド 「はい?」
ロベルト 「もしもフレデグンド様と陛下で二股かけやがりましたら、真・隼どころか欠片も残さず切り刻みますから、そのおつもりで」
アスアド 「す、するかそんなこと!!!」
結婚てノリと勢いですよね。
この組み合わせで電撃結婚だと、最初から素直に喜んでくれるのは団長くらいです(笑)。
「アスアドは報われて欲しいけど、実際問題クロデは厳しいよな」から始まった妄想、次でラスト。
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