需要あるぞのお言葉ありがとうございます!
広い海原いっぱいに魚人を敷き詰められては応えないわけにはいかないです。
なんというビッチビチの愛…!www
というわけで、鉄は熱いうちに打てと言わんばかりのアスフレ妄想、ラストです。
日記と小説の間という感じでお読みください。
……こんなにアスアドが報われていいのだろうか……
広い海原いっぱいに魚人を敷き詰められては応えないわけにはいかないです。
なんというビッチビチの愛…!www
というわけで、鉄は熱いうちに打てと言わんばかりのアスフレ妄想、ラストです。
日記と小説の間という感じでお読みください。
……こんなにアスアドが報われていいのだろうか……
●その1
●その2
のつづき
***************
フレデグンドは結婚というものをさっぱり理解していなかった。
結婚というより、夫婦で何をするか、だ。
なりゆきとはいえ結婚した以上避けるわけにもいかず部屋へ訪れたアスアドに向かって 「では夫婦の営みを始めましょう」 と告げてひるませた挙句、フレデグンドは夜着を身に着けたままさっさとベッドにもぐりこんだ。
アスアドがきょとんとしたのも無理はない。
分かってないのだということが分かった瞬間、また例のポーズで頭を抱えるはめになった。
「フレデグンド様……」
「何をしているのですか。ほら」
寝転んだフレデグンドが左手を差し出してくる。意図を測りかねて首を傾げると、フレデグンドは身体を起こしてアスアドの右手を取った。
「夫婦とは、こうして手をつなで横になるのでしょう。それを『寝る』というのだと、昔ちゃんとラティルダに聞きました」
「(ラティルダさん……!!!)」
「違うのですか?」
アスアドは、首を傾げるフレデグンドをつかの間見つめた。
この人は、望んでこうしているのではない。
その行動原理はいまだに理解できないが、『クロデキルドに幸せな結婚生活を送ってもらうために義務感で結ばれた今の関係を解消してもらう』ためにこうしている。
アスアドにとって、クロデキルドの結婚は感情は別として頭では理解できるものだった。
国を率いる王族にはある程度の責務がある。
自分の両親とジャナムの皇帝・皇妃の関係が同じものだとは考えなかったし、ある種の義務や契約関係は排除できないものだと知っている。
ダナシュ8世とシャイラを側で見続けていた彼からすれば、クロデキルドとメルヴィスの結婚は最良と言っても過言ではないほどうまくいっている(もちろん個人的な感情は抜きにして)。
フレデグンドの言う「しあわせ」とは恐らくボッシュとラティルダのような関係なのだろうが、それはクロデキルドに望まれているものではないし、本人も望んではいない。結婚の形は様々なのだ。
今の自分たちの関係も、『様々』なうちのひとつだろう。
「アスアド?」
「はい」
アスアドは、フレデグンドの手を取ると小さく微笑んだ。
本当に、何がどうしてこうなったのかは分からないが、諸々の手続が終わってしまった時に覚悟を決めた。
出来るだけ、この人の純粋な思いを守っていこう。
そして、フレデグンド自身に大切な人ができた時に、この手を離そう。
「……間違ってません。それでは、休みましょうか」
「軽く手をつなぐだけにしましょうね。本当に子供ができるようなことがあっては困りますから」
「そうですね」
「お姉様にご自分の気持ちを気づいていただきたいだけであって、困らせるつもりはないのですもの」
「はい」
***************
そんな感じで1年経過。
ある日、手をつないで寝てるだけだとばれ、フレデグンドには真実を告げずにアスアドだけが呼び出された。
「い、いや、これには理由が……」
「フレデグンドをないがしろにしているわけじゃあるまいな?」
「違います!! ……フレデグンド様は、あの……」
「なんだ?」
「その……夫婦が何をするのかを理解しておられなくて」
「教えれば済むことだろう。それも夫の役目のひとつだ」
顔色も変えずに返された言葉に、アスアドの胸がズキンと痛んだ。
そういう話を、クロデキルドから聞きたくない。
「――足に触れられるのを、ひどく嫌っておられます」
話を逸らすために咄嗟に口にしてしまった。
言ってから後悔したが遅い。クロデキルドに問い返されて、諦めて顔を上げた。
おそらくフレデグンドはこのことを誰にも語っていない。自分に気づかれていることにも気づいていないだろう。アスアドは、彼女がうなされていた時のうわごとからそれと知った。
「……協会の兵に足を攻撃され、動けなくなったことがあるようです。その……先王陛下の、崩御の際に」
「っ!」
「それに……あの、ご自分が先に子を授かったらどうしようと思い悩んでおられますので……」
「……なるほど。私の方にも責任があるのだな」
「い、いえ! そういうわけでは…!」
わたわたと慌てるアスアドを眺めていたクロデキルドが、ふ、と息を吐くように笑った。
「陛下?」
「人の心とは勝手なものだな、安堵するとは」
「え?」
「なんでもない。…それにしても」
「は、はい」
「毎晩、手をつないで寝てるのか? 1年間もそうしていたのか?」
「………………………はい」
「ふふ」
「陛下…?」
「良いな。それくらいなら罪にもならぬかと思ったが、これではやはり罪になるか」
「……え?」
「フレデグンドがあれほど怒っていたのも今なら分かる、……が」
「クロデキルド様」
「ん?」
「ありがとうございます。……ました」
「ああ」
クロデキルドは目を閉じると、瞼を開いて微笑んだ。
「どうやら余計なお世話だったようだ。悪かったな、義弟殿」
***************
「聞きましたわよ、アスアド!」
「フレデグンド様? どうなさったんですか?」
「お姉様がようやく自覚なさったんですのね!? 遅すぎますわ…!」
「え?」
「本当に気づいてなかったんですの? お姉様は、あなたのことがお好きだったんですわよ!」
目が丸くなったが、フレデグンドがどこからその話を聞いたのか、アスアドはそちらの方に驚いていた。
クロデキルドの気持ちは、昼に交わした会話で気づいていた。信じられない気持ちはあるが、自分の想いは確かに届いていたのだ。そのことはかなりの驚きだったが、それ以上に嬉しいと素直にそう思う。
元よりかなうはずのない恋心だと思っていたが、この国までやって来たことは間違いではなかった。
「……今なら、」
低い呟きに、アスアドは自分の考えから抜け出した。
うつむいて考え込んでいたフレデグンドが、勢いよく顔を上げる。
「今なら、お姉様を幸せにしてさしあげることができます! アスアド、わたくしと離縁してお姉様を奪いなさいませ!」
「え、ええっ!?」
「わたくしはお姉様に幸せになっていただきたいの。あなただってそうでしょう?」
「……この1年を、なかったことにすると」
アスアドの声のトーンが下がったことに、フレデグンドは気づかない。
そうです、と元気よく頷いた。
「わたくしはお姉様の代わりでしたでしょう? わかってます、それで良いんですもの」
「……」
「グントラムはまだ起きているかしら。早速――…っ!?」
扉へ向かおうとしたフレデグンドの腕を、アスアドは思い切り掴んで引き寄せた。
「なんです?」 と見上げてきた瞳に浮かんでいるのが純粋に不思議そうな表情であることにため息をつく。
本気で離縁するつもりだ、この人。
なんて勝手で、なんて無茶苦茶で、なんて…
アスアドは首を振った。
「……どうして、いつもご自分を後回しになさるんですか」
「何を…」
「結婚はね、そう簡単には解消できないものです」
「でもお姉様のためでしたら、その難しいことだって」
「そうしたら、誰がフレデグンド様のそばにいるんですか?」
「でも、あなたが慕ってるのはお姉様でしょう」
「……確かにお慕いしております」
クロデキルドに想いが通じていたと知って、嬉しかった。
「なら」
「でも、俺が自分の手で幸せにして差し上げたいのはあなたです、フレデグンド様」
嬉しかったから、気づくことが出来たのだ。
国も家族も捨てて選んだ恋は、もう終わっていたのだと。
クロデキルドの結婚によっても自分が結婚することになっても整理のつかなかった気持ちが、そこでストンと落ち着いた。そして、気づいたのだ。
「え?」
「いつもご自分のことを後回しにしてクロデキルド様の幸せを願い、民のことを思う。……そして、眠りながら涙を流している、あなたを」
「わ、わたくしが…泣いてる?」
「俺が手をにぎって頭をなでると泣き止んで小さく微笑まれます。俺は…いつも笑っていただきたいです」
フレデグンドが、捕まれている腕を乱暴に振り払った。
「お姉様への心に二心があるのですか!?」
「二心ではありません。クロデキルド様をお慕いする気持ちが恋心ではなくなっただけです」
両手を握ってみる。
フレデグンドは、今度はその手を振り払わなかった。
「……1年もおそばにいたんですよ? なのに、そんなに簡単に手離せるほど俺のことをどうでもいいって思ってらっしゃるんですか?」
「で、でも」
「俺は違います。……フレデグンド様も、違うと仰ってくださいませんか」
「わたくしは…」
ぎゅ。
と、返事を待たずに目の前の華奢な身体を抱きしめた。
1年間も結婚生活を送ってきたというのに、驚くことにこれが初めての抱擁だ。
腕の中の身体は緊張するように硬くなったが、すぐに力が抜けるのが分かった。
「これじゃ、安心しませんか? 手離したくないって、思いませんか?」
「……」
「フレデグンド様が嫌だと仰らなければ、ずっとこうしてますよ」
「……アスアド」
「はい」
「イヤ」
アスアドは無言で手を離す。
フレデグンドは一歩下がって距離を取ったが、思いなおしたように一歩近づいた。
挑むように見上げて、唇を引き結ぶ。
「それほどに言うなら、私に敬称をつけるのはやめなさい。…距離感があるようで、嫌です」
「フレデグンド」
「……」
「これでいいんですか? フレデグンド」
「……あなたは、本当にそれで良いんですの?」
「さっきから何度も言ってるじゃないですか。……っと」
「きゃ!?」
「軽いな、フレデグンドは。 非力な俺でも抱え上げられます」
「何をするんですの!」
間近になった顔を覗き込んで、アスアドは悪戯っぽく目を光らせた。
「俺のこと、好きですよね?」
「っ!?」
「フレデグンドは、俺のことが好きですよね?」
「し、知りませんっ」
「俺は好きですよ」
「~~~ッッ!!!」
顔を真っ赤にしたフレデグンドは口をぱくぱくと開閉した挙句、アスアドの額に強烈な頭突きをかました。
***************
「クロデキルド様?」
「メルヴィスか。どうした?」
「私の台詞です。どうかなさったのですか?」
「振られた」
「は?」
「いや…いい。手を出してくれ」
「は」
「握ってくれ」
「御意」
「…………」
「これが、どうか?」
「いや……」
「何か、気がかりなことでも?」
「そうだな。なかなか子が出来ない」
「……焦りは禁物でしょう」
「これではフレデグンドに先を越されてしまいかねないな」
「フレデグンド様ですか? ……しかし、あの2人は」
「気づいていたのか」
「…申し訳ございません。良い判断だと思っておりましたので」
「私より先に子が出来る心配がないからか。……しかし、そろそろまずいぞ」
「は?」
「余計な後押しをしてしまった気がする。吹っ切れた顔をしていたしな」
「吹っ切れたのですか。ようやく」
「…………」
「クロデキルド様?」
「心配するな、なんでもない」
「……」
「メルヴィス」
「は」
「お前の心は私のものだ」
「御意のままに」
「……我らは、それで良い」
「ええ」
アスアドが報われるおはなしでした。その分クロデさまが微妙な感じになってしまいましたが…
この後はなんかイチャイチャするだけになりそうなので省略。フレデさまの反応は可愛いと思うので、アスアドがからかうことも多くなりそうです。クロデの頼れる双璧になると良いよ!
若干、ドラマCDネタも混ざってます。
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