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星屑の城・完結1周年!!
おっめっでっとーーーう!!!!
地味な記念日だけど祝うさ!
ティアクライスの1周年はスルーしたけど(笑)、星屑は祝うさ!
たとえ「極」に星屑が載ってなくても……ッ!

何かできないかと突貫で書いてましたが、時間切れ。
……時よ戻れ!(15分ほど)

無理やり日付を25日にしたところで、星屑の1周年記念SSです。

星屑から15年ほど前の、シトロ…じゃないけど言うなればシトロ’村。
星屑団長、団長の妻、後の側近3名、全員に名前がついてます。
TK団長は命名前なので名無し。つまりTK団長の産まれた直後のお話です。

ほとんど会話ばっかりですが、祝う気持ちは込めました。



※後の星屑団長=シグマ(シグと呼ばれることもある)、星屑団長の妻=ハルカ、後の魔道士=リウ、後の剣闘士=ジェイル、後の女剣士=マリカ。
※彼らの故郷の村での話。≪オルダ≫進出前です。



その日。
村に、赤ん坊の声が響き渡った。





小さな家の小さな寝室で、彼らは額をつきあわせながら籠の中を覗きこんだ。
「可愛いねえ…!」
ため息をつくように呟いたマリカに、シグマが「そうだろう」と得意そうに鼻を膨らませる。

リウが感心したように腕を組んだ。
「猿みたいだな」
途端に、顔も向けずにマリカが隣にある頭をスパンと勢いよくはたいた。
「何をする。シグそっくりだと言いたいだけだ」
「おいおいリウ~? それは俺が猿っぽいと?」
「違うのか?」

「まあ、シグは猿っぽいけどさ。でもこの子は違うでしょ」
「……マリカ、それは俺に対して全然フォローになってない」
「あんたにフォローしてどうすんのよ」
マリカは鼻で笑うと、目を細めて赤ん坊を眺めた。
「今は産まれたばかりだから肌が赤いけど、あと数日してごらんなさい、今度は本っ当…に、天使みたいに可愛くなるんだから。ね!」

マリカが振り返った先には、寝台に横になったハルカがいた。
まだ疲れが抜けていないのか少々ぐったりしていたが、声をかけられるとにこりと笑う。

「私には今のままでも充分天使よ。シグマが猿っぽいのは私も認めるけど」
「お前まで……」
妻にまで猿認定をされ、シグマががっくりと肩を落とす。
マリカは、ハルカやリウと視線を交わし合ってくすりと笑った。

彼らの会話に加わらなかったジェイルは、その間じっと赤ん坊の顔を眺めていた。
籠の中で白い清潔な布にくるまった赤ん坊は、今はすやすやと寝息を立てている。
握りしめられたままの拳に指を伸ばしかけ、慌てたように引っ込めた。
その後は真剣な顔で籠の中を凝視し続けている。

そんなジェイルの様子に最初に気づいたのはマリカだった。
「……ジェイル、何してんの?」
「ん? …ああ、いや、ちょっと心の中で話しかけていた」
「は?」
「お、なんて?」
きょとんとしたマリカの横で、シグマが元気よく頭を上げる。
ジェイルはシグマをじっと眺めた後、赤ん坊を見下ろしてふ、と静かに笑った。

「なに。『お父さんだぞ』、とな」

「ジェイルさ~~ん?」
「母親は無条件に分かるだろうが、父親はすぐに分からないだろうからな。教えてやらないと」
重々しく頷いたジェイルにシグマが飛びつき、頭を抱え込んだ。
「おい、何をする」
「何をするじゃねえだろ! お前の冗談は怖いんだよ!」

ぐりぐりと頭に拳を突きつけるシグマを見て、マリカがはは…と乾いた笑い声をあげた。
「ジェイルは真顔で冗談言うからねえ」
「いや、冗談ではない。父親になっても良いと思っているぞ」
「確かにシグマ一人じゃ頼りないな。よし坊主、俺も父親だ」
「リウまで何を言い出すんだよ! ……あっ」

さらに言葉を続けようとしたシグマが慌てたように口をつぐんで籠の中を覗きこんだ。
顔をしかめた赤ん坊が顔を左右に揺らしている。
ほわ、と小さな声が漏れたが、一同が固唾を飲んで見守っていると、ふうっと再び眠りについた。

「……あぶねえ」
「シグがうるさいからでしょ」
「そもそも最初にジェイルが変なこと言うから」
「だが静かにはしていたぞ」

シグマ、マリカ、ジェイルがひそひそ声で責任を押し付け合っている横で、リウはハルカに手にしていた包みを渡した。

「祝いの品は改めて持ってくるが、入用かと思ってこれを持ってきた」
「すごく手触りのいい木綿ね。いくらあっても足りないってことないから助かるわ、ありがとう」
「いや。名はもう決めたのか?」
「まだなのよ。誰かさんが優柔不断なせいでね。命名は俺にまかせろー!なんて言ってたくせに」
「ほう、さすがだな」
リウがニヤニヤと笑う。
シグマはくるりと振り返って口を尖らせた。
「慎重だと言ってくれ。一生使うんだからな」
「生まれるまで時間がたくさんあったのに」
「女の子の名前ばかり思いついてたんだよ」
「それはただの願望だ」

ジェイルが冷静に指摘すると、ハルカがぷっと吹き出した。
「そうそう、そう言えばこの人、赤ちゃんの顔を見て最初に『女の子か!』と叫んだのよ」
「……願望が過ぎるな」
リウが白い目でシグマを見やる。シグマは慌てて手を振った。

「いや、俺、男の子で嬉しいぞ!? 一緒に遊んでやれるし、大きくなったら男同士の話もできるし! なにしろ嫁に行かないし! 好きな女を奪うなら喜んで応援するけど、こいつがもし娘で大きくなってどこの馬とも知れないやつに取られたら、なんて思ったら……! そんなの、そんなの俺……!」
「…………泣くなよ」
「ほんとに、男でよかった……! 父さんと一緒に剣術やったり農作業したりしようなあ……!」

ぼろぼろと泣き出したシグマの肩を、ジェイルがぽんぽんと叩く。
赤くなった目を見下ろして重々しく頷いた。

「大丈夫だ、この俺もついている。俺たちで、この子を立派な男に育てよう」
「ジェイル…!」
「世話が焼けるな。どうせ俺がいないとろくなことにならないだろうに」
「リウ~…!」




「…あのー、ジェイルとリウがさり気なく『育ての親になるぞ』宣言してるように聞こえるんだけど」
「リウはからかってるだけでしょうけど。でもいいんじゃない? 父親が3人で」
ハルカは明るく笑うと、籠の中で眠る赤ん坊に優しい目を向けた。
「この子にも将来、あなたたちみたいな友達が出来ると良いわね」
「できるでしょ? シグマとハルカの子なら、誰とでも友達になれるよ、きっと」
マリカはにこりと笑うと自分の胸をドンと叩いた。
「あたしはお母さんにはならないけどね。この子の『頼りになるお姉さま』にはなるつもりだから」
「ありがと、力強いわ」
「ほんとにお疲れ様。そしておめでとう」
「ありがとう」
ふわりと微笑みあって、マリカは籠にも笑顔を向けた。

「赤ちゃんも。最初の誕生日、おめでとう」



マリカの言葉に反応したのか、父親たちの騒ぎがうるさかったのか、赤ん坊がほあああ…と泣き出した。
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2010/03/25 23:59 | Comments(0) | TrackBack() | 二次創作

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