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寒い日に・2
最初のがテッドの日記念というにはあんまりだったので。
幻水1軸で、テッドと坊(レン)。




「寒いな」
カチカチと歯がぶつかりあう音と一緒にこぼれた呟きはひどく静かで、テッドは無言で隣りを見た。
静かな表情をしているかと思いきや、目が合ったレンはにやりと口を横に広げている。カチカチぶつかる歯がはっきりと見えて、テッドもにやりと笑いを返した。

自分の歯もさっきからカチカチとやかましいことこの上ない。
油断大敵とはこのことだ。昨日は走ると汗をかくほど暑かったのだ。そのうえ、今朝は昨日と同じような空模様だった。気温だって昨日と同じと信じて何が悪い?
いや、悪い。
この季節、この土地では急に霧が出ることなど珍しくもない。
それと同時に急に気温が下がることだって、ちゃんと知識はあったのだ。

同じことを考えたのだろう、レンがばつの悪そうな表情を浮かべた。
「分かってたのに、僕は毎年同じ失敗をするな。テッドが大丈夫って言うから、つい信じちゃった」
「おい、俺のせいかよ!?」
「自信満々に仁王立ちして言い放ったくせに」
「その前にお前が『今日も暑くなりそうだな』って言ったんだろ!」
「で、お前が『そうだな、むしろ薄着でいいんじゃねえ?』って言ったんだよな」
「そこでお前がバカ正直に上着を脱ぐから」
「正直は美徳だ」
「時と場合によるだろ」
共にカチカチと歯を鳴らしながらの会話だ。
『時と場合によるだろ』は『とっきとばーによよゆだろ』と発音され、顔を見合わせた2人はカチカチと歯を鳴らしながら同時に爆笑した。

「ひゃひゃ、ううまくしゃべれねえええ」
「いいまけんっかしたら、ぜったたいわらう!」
「ももうわらってる~っって!」
「あっひゃひゃひゃ」
「ぼぼんぼんがなんちゅーわらいを、っひゃっひゃひゃ」
「ててっどだって!」

あひゃひゃ、うひゃひゃと笑いながら2人はいつの間にか肩を組んでいた。
触れ合った場所が少しだけ暖かい。
それに気付くと、肩を組んだまま2人はごつごつと体当たりを繰り返した。

「てッ!おまっ…石頭すぎんぞ!寒いから響く!」
「ひゃっひゃひゃ」
「ひゃひゃじゃねえ!」

テッドは相手の頭を抱え込んで肘でぐりぐりと小突き回す。逃れるように身体をひねらせたレンはお返しとばかりにテッドの頭を抱え込んだ。
ひとしきりはしゃぐと、身体が少しだけぽかぽかと暖かくなってくる。
頬と鼻の頭を真っ赤にした2人は、白い息を吐き出しながら互いの顔を見てまたひとしきり笑い声を上げた。

「さっ、帰るか!」
「ほうじ茶が飲みたいな」
「じじくさいぞ、レン。寒い時はココアだろ、やっぱ!」
「甘いから嫌いなんだよ。まあグレミオがホットチョコレート用意してるだろ」
「もっと甘いじゃん」
「僕のは砂糖が入ってないビターなんだよ。それにちょっと酒をたらす」
「おっ、それいいな」
「だろ?クレオが教えてくれたんだ」

互いの肩に回された腕はそのままに歩き出す。と、そこでテッドが立ち止まってレンは軽く前につんのめった。

「急に止まるなよ」
「あー、いや」
「どうした?」

覗き込んできた顔を開いている方の手で軽くはたくと、相手はぶひゃっとまたしても良家のお坊ちゃんらしからぬ擬音を発した。

「レンはあったかいなー、って」
「テッドも充分もふもふだぞ。心配するな」
「なんだもふもふって」
「その頭」
「なにをー!風が吹き込んできて結構寒いんだぞ!」
「いや、あったかそうだ。…うん、あったかい」
「抱えるな!」

レンが声を上げて笑う。すぐにテッドも笑い出す。
もうひゃひゃではなく、あははと普段通りの明るい声だった。

わざわざ肩を組みなおし、2人は遠くに見える城下町の灯りに向かって歩き出した。

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2007/10/11 01:31 | Comments(0) | TrackBack() | 二次創作

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