続くか分かりませんが、置いておきます。
TKで、主人公とマナリル。…ですが、書の部屋の住人はギリアム以外出てきます。
最後の方、星の印が変わった後です。
TKで、主人公とマナリル。…ですが、書の部屋の住人はギリアム以外出てきます。
最後の方、星の印が変わった後です。
●受け継がれしもの (TK/団長、書の部屋の住人-ギリアム)
※団長=「リードァ」
「なあなあ、学者のおっさん」
「……ムバルです」
「ちょっと、書のことで聞きてえことがあるんだけどさ」
いつもの抗議をスルーして、リードァは馬乗りにしている椅子の背に顎を乗せた。
行儀の悪い格好だが、この団長にはそんな仕草が似合う。なにしろまだ十代の少年なのだ。
書のことという言葉を聞いて、書物の整理をしていたマナリルと壁に向かって調べ物らしきことをしていたルオ・タウも手を止めた。3人の注目を浴びたリードァは、「いや、たいしたことじゃねえんだけど」と前置きをして懐から書を取り出した。
「オレの持ってる星の印が、こないだ突然変わったんだ。多分この『輝ける遺志の書』だと思うんだけど。そういうことってあるのか?」
「え?」
ムバルが驚きの声をあげた。リードァから『輝ける遺志の書』を受け取ると、中を開いてから首を傾げる。
「特に、変わったところはないように思えますが……」
「リウもそう言うんだよな。星の印にも変化がねえって。けど」
「書による幻影に変化は生じたのか?」
ルオ・タウが横から言葉をはさむ。ムバルから書を受け取ると、表裏をひっくり返してから中身を確かめた。
リードァはなぜか眉間にしわを寄せる。
「変化っていうか……前に見た幻の続きがちらっと見えた。天魁星がほんとのほんとに最後だったんだな。……あんまり気持ちのいいもんじゃなかった」
「そうか」
つまり、最後に残った4人のうち3人も倒れてしまった後の幻影が見えたのだろう。
確かに気持ちのよいものではないに違いない。
ルオ・タウは短く相槌を打つと、再び書に視線を落とした。
リードァが椅子を揺らしながら、そんなルオ・タウを見上げる。
「なんか感じるか?」
「いや……これによって星の印が変わったとも思えないし、新たに特別な力も感じない」
「だよなあ……」
「具体的には、星の印がどんな風に変わったんですか?」
今度口をはさんだのはマナリルだ。彼はうーんとまた困ったように唸った。
「星の印の名前は分かるんだ。『受け継がれし遺志』って」
「聞いたことのない名だな」
「……結構、強い力だと思う。だからありがてえことはありがてえんだけどよ。……なんでオレだけなんだ?」
「他の人の星の印も強くなれば助かるな」
「それもあるけど。なんか気になるんだよなあ……」
「……私も、触ってみてよいでしょうか」
「ああ、もちろん」
リードァに促されたルオ・タウがマナリルに『輝ける遺志の書』を差し出す。
それに触れようとしたマナリルが、小さく息を飲んだ。
反射的に手を引こうとする仕草を見て、リードァが素早く反応する。
「マナリル! どうした!?」
「姫様!」
「何か変化があったのか」
「あ、いえ……すみません」
もう一度手を伸ばし、書を受け取った。ずしり、と重い手応え。
だがそれだけだ。新たな幻影も、星の印も……感じない。
何度か本をひっくり返してみてから、マナリルは首を傾げた。
「一瞬、何かを感じた気がしたんですが…。私にも変化はないみたいです」
「そ、そうか…」
リードァが明らかに落胆した表情になり、慌てる。
「す、すみません。期待させるような素振りをしてしまって」
「いや、マナリルのせいじゃないから気にすんな。…ってことは、やっぱオレだけかあ……」
「不思議ですね」
「んー。……この服とか、アトリからもらった剣とかの影響かもしれねえなあ」
「あの世界のものを身につけてるから、とか?」
「ああ。それにしてはタイミングがズレてるのが気になるけどな」
言葉を切ったリードァは考え込むように宙を睨んだが、すぐに首を振ると、椅子から勢いよく立ち上がった。
「ま、分からないなら考えてても仕方がねえ! ありがとな学者のおっさん、ルオ・タウ、マナリル!」
「ムバルです」
律儀に訂正をすると、リードァはからからと笑った。毎回おっさん呼ばわりをしては訂正されているのに、相変わらず第一声はおっさんだ。どうやらこのやり取りが好きらしい。
「ありがとな、ムバル」
わざわざ言い直すと、マナリルの手からひょいと『輝ける遺志の書』を取り上げた。
「あ…!」
「ん?」
「い、いえ。なんでもありません」
伸ばしかけた手を急いで引っ込めて微笑んでみせたが、リードァは自分の手の中を見て首を傾げた。
「気になるのか? さっきも少しだけ反応したよな」
「……一瞬だけで何か分かりませんでしたけど……でも……」
「でも?」
「リードァさん、もう少しだけ調べさせていただいても構いませんか?」
「読もうとすると力を使うだろ。無理はさせらんねえぞ」
意味が分かることよりもマナリルの身体の方が大事だ、ときっぱり言い切る。
「読みません、約束します。ただ、もう少し長く触れていたら何か分かるかも……って」
「そうか? じゃあオレの部屋に戻しといてくれ。勝手に入ってくれて構わねえから」
「いいのか。手元から離して」
「城の中にあることには変わりねえだろ。マナリルなら安心だし。……ルオ・タウにムバル、無理させないようにしてくれよ」
――――――
『受け継がれし遺志』の考察をしているうちに出来たもの。
続くとしたら、次は【星屑】要素が含まれると思います(すみません;)
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