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2024/05/02 23:48 |
ティアクラ5周年
おおお……
久し振りすぎて、ブログの管理パスワードがわからず
再設定したりしていたら日付を超えてしまった……

ホームページの設定もちょい忘れなので
ティアクラ5周年記念のお話を、とりあえずブログにアップします。
108星EDの追加ムービーあたりの話。






◆◇ ED後、TK団長(リードァ)、リウ、アトリ


一なる王が消え、世界はそれぞれ独立した。
もはやトビラは百万世界を繋ぐものではなく、閉じられた世界の中で2つの場所を繋ぐものとなった。

……はずなのに、アトリが来た。

理由はさっぱりわからない。
アトリ自身にもよくわからないらしい。
トビラが閉じたことは知っていたが、ふっと「今なら行ける」気がしたそうだ。
そこで迷わずこの世界へ通じるトビラをくぐり、そしてこの世界に現れた。

まあ、別に理由はわからなくても構わない。
アトリが目の前にいる事実に変わりはないのだし、――それなら、彼に伝えたいことがあった。


 *********


「コンコンもしもーし。ちょっとおジャマしていいですかー」
「リウ?」

中庭からトビラへ通じる道は両側に木々が並んでいる。ちょっとした林の中の小道状態だ。
緩やかにカーブした先で一度直角に近い角度で右に曲がるため、中庭からトビラを見ることは出来ない。
トビラの周囲は小さいながら広場になっており、その周囲は木柵で囲まれている。
2人は、トビラの近くにいた。アトリは柵に寄りかかっていたが、リードァは腰をかけて足をブラブラさせている。
リウが小道の角から頭を覗かせると、軽く反動をつけてから飛び降りた。

「コンコンって、なんだよ」
「ノックのつもり。ほら、おジャマかもしれないじゃん」
「リウがジャマだったことなんて、今まで一度もねーぞ?」
きょとんと首を傾げたリードァに、リウは苦笑した。
これを言われたのがジェイルだったら『オレの方こそ、お前を邪魔に思ったことなんて今まで一度もない。これからもあり得ないだろう』と真顔でぐいぐい押していくだろうし、マリカだったら『なに言ってんの』と呆れた顔になるだろう。
だが、リウはそのどちらでもなく、「うん知ってる、ありがと」と礼を言った。
そして、リードァの隣へちらりと視線を走らせた。

おジャマかもしれない、とはリードァに対して思ったわけではない。アトリに対してだ。
なぜなら、アトリは”リードァと会う”ために来ることが多い。そのため、リードァと2人で話す時間を大切にしている。リードァはあまり意識していないだろうが、リウはアトリが来ている時に、あえて顔を出さないことがあった。
まして今回の来訪はどう見てもイレギュラーで、だからこそ大事な話もあるかもしれない。

リウが考えたことを、アトリは察してくれたらしい。
「大丈夫。むしろ、そろそろリウを呼んでもらおうと思ってた」
にこりと笑って手招きをすると、リードァが「なら丁度良かった」と笑った。
「リウ、ちょっと交代。オレは飲みモンと食いモン持ってくる」
「え? ちょ……」
リウが止める前に走りだしたが、すぐに立ち止まってこちらを振り返った。
「アトリ、まだ帰るなよ!?」
「うん。でも早くしてね」
「ああ、わかってる!」
リードァは親指を上げてこたえると角を曲がり、視界から消えた。
今現在、トビラがつながってるのは事実だが、同時にこれは特別だ。いつまでつながっているかわからないし、何があるかもわからない。だからトビラから目を離すことはできないし、場合によったらすぐに帰らなくてはならないかもしれない。リウが敢えて言うまでもなく、リードァもそれは理解しているらしい。

それなのに、その場を離れるほどお腹が空いているというのだろうか。
「気を利かせた……わけじゃねーと思うけど。リードァのことだし」
リウが呟くと、アトリはくすくす笑った。
「わからないよ? リードァのことだし」
「意外に意外なとこで鋭かったりするからねー」
「そうだね。というわけで、リウ」
ふっ、とアトリが笑いを収め、リウをまっすぐに見つめた。
「ありがとう」
「……」
真顔になったリウは、しばらくしてからふうっと大きく息を吐き出した。
「……ってことは、オレの言ったこと、ムダじゃなかったんだ」
「うん」

たまたまリードァがいない時にアトリが来て、2人で話をしたことがある。
その時に、リウは言ったのだ。
もし星を束ねるしか方法がないとしても、一番最初に覚悟を決めようとしないでくれと。
アトリは、≪あの人≫の生活していた城があるこの世界と、この世界の天魁星であるリードァに、執着といっても良いほど心を寄せている。だから『あの世界が消える前に』と決断してしまわないか心配していた。

「実を言うとね、何度か思ったんだ。被害を最小限にするなら、星を束ねるのは今しかないかな……ってね」
「そっか」
「リウの予想どおりでしょ」
「まー、ね。オレの知ってる天魁星の中で、最初にムチャするのはアトリだろーなとは思ってた」
「えへへ」
「いや悪いけど褒めてねーよ?」
「わかってる。でもそう思ってくれたおかげで、ぼくを止める言葉をくれた」
アトリは小さく笑った。
「星の力を束ねることが頭に浮かぶたび、リウの言葉を思い出した。リードァは諦めない、きっと何か方法を見つける。仮に、星の力を束ねるしか方法がないとしても、リードァも僕も、その最善のタイミングを見極められるはずだって」
「言いましたねー。オレったら、偉そうに」
「あのおかげで踏みとどまれたんだ。……だから、ありがとう」
どういたしまして、と応えてリウも微笑んだ。
「でも、星を束ねないという選択をしたのはアトリだよ。だから、オレからもありがとう。最後の戦いにアトリたちがいてくれなかったら、きっと勝てなかった」
「……うん。でも僕たちだけでもダメだった。多くの世界の、大勢の想いが必要だったんだと思う」
「そだね」

リードァも、アトリも、もう一人のマリカも、≪書≫を12冊集めていた。この時点で36冊。
だが、後から考えれば考えるほど、あの戦いはさらに別の世界でも行われていたのかもしれないのかと思えてならないのだ。
そう――例えば、宿星が108人集まるように、≪書≫も108冊集まっていたのではないか、と。

思いつきのような考えだから、リードァには言っていない。
言ってどうなるわけでもないし、なによりそれだけの数の世界が消えたなんて考えたくもない。

「(……消えた世界か)」
リウが横目で隣を窺うと、アトリはどこかぼんやりした顔で広場の先を見つめていた。
視線の先にあるのは、リウにとっては既に第二の家である、石造りの古い城砦。
「……もう一度、見られて良かった」
ささやくような呟きに、何をと問い返すのは無粋すぎるだろう。

「(『うち』って、呼んでたんだっけ)」
リウたちの前にこの城を本拠地としていた人たちのことだ。アトリの『あの人』と、その仲間たち。
彼らはこの城砦に特別な名称をつけなかった。ただ、嬉しそうに、誇らしげに、この城は自分たちの『うち』なんだとアトリに紹介したそうだ。

「ねー、アトリ」
「うん?」
「ホツバさんか誰か呼んでトビラを見ててもらってさ、ちょっと城の中まで行く?」
アトリは静かに首を振った。
「ここから見ているだけで充分だよ」
「城の中までは見えないでしょ?」
「大丈夫」
城を見つめる目が細くなった。
「大丈夫だよ、よく知ってるから。まるで自分のうちみたいにね」
「そっか。そだよね、よく知って…………」
ふ、とリウの言葉が途切れた。
「リウ?」
「……ね、アトリ」
「なあに」
「『あの人』ってさ、他の世界にはあまり行かなかったの?」

それは少し前、異世界に通じなくなったトビラを眺めた時にも思ったことだった。
アトリは、この世界をよく訪れる。
リードァが他の世界へ行けないなら会うためには来るしかないが、それにしても多かったと思う。
彼とて自分の世界では組織を率いる立場にあるのだから、異世界へ、それも一人で旅立つことはあまり歓迎されないだろう。なのに、当たり前のように、自然にひょいと現れた。

その”自然さ”はおそらく慣れからくるものだろう。
城が≪輝ける遺志の書≫の世界にあった時から、アトリは『あの人』に会うために何度もトビラをくぐっていたのだ。その様子からすれば、おそらく逆は極端に少ない。
「一度も行ったことがないよ。あの人は、他の世界に行かないと決めていた」
リウの考えを裏付けるようにアトリが頷き、もう少し詳しく教えてくれた。

『あの人』のいた世界そのものは、他の世界との交流が盛んだったらしい。
レネゲイド退治で協力しあうことはもちろんだが、大きな戦いの際には他の世界から援軍を募ったり、逆に他の世界の戦いに援軍を送ったりもしていたそうだ。特によく似た世界もあって、城内では同じ顔をした同じ名前の2人に会うこともあったという。
だが、『あの人』だけは別で、一度も他の世界へ行かなかった。

「天魁星としては非常に立派な心がけだね」
「ふふっ。リウもうちの軍師と同じこと言うんだね」
アトリは軍師に全く悪いと思ってなさそうに笑ってから、でも違うんだよと続けた。
「天魁星は関係ないんだ。これは別の人から聞いたんだけど、他の世界へ行ったら”団長”ではなく”子供を探す父親”になってしまいそうで怖かったみたい。だから戦いが終わるまでは、って」
「つまり、”戦いが終わったら”他の世界へ行くつもりだったんだ。……ひょっとして、その時はアトリも一緒に旅する予定だったんじゃない?」
「……リウは鋭いなあ」
アトリは苦笑すると、でもちょっと違うと首を振った。
「確かに、あの人は戦いが終わったら子供を探すためにいろんな世界へ行くつもりだった。でも、僕はその旅について行くという約束はしていない。……ただ」
「他の世界へ行く時は、最初にアトリの世界へ行く――って約束を、してた?」
「うん」
アトリは小さく頷いた。

もう、どのくらい前になるのだろうか。アトリがあの人と会話をしたのは、ちょうどこの辺りだった。

 『アトリがいる世界だろう? 俺が気に入らないはずがない』
 『ほんとに? 来てくれるの?』
 『もちろん、一番に行くさ。案内してくれるか? アトリ』
 『う、うん! うん!!』

アトリが首を縦にぶんぶん振った場所で、リウは静かに息を吐き出した。
「……最初に会った時って、もしかして『あの人』を迎えに来たとか?」
「うん。トビラが開くようになったから、戦いが終わったんだと思って。僕も天魁星になったし、話を聞けたらと思ったんだ」
「そっか。それじゃオレたちほんとに驚かせたね。ゴメン」
「リウが謝ることではないよ」
静かに微笑んで、アトリは目を伏せた。

リウは、木立越しに見える自分たちの城を眺めた。
あの建物に、以前住んでいた人たちがいる。
空色の鎧を着ていた、リードァと違ってマントも似合うあの戦士は、トビラから駆けて来るアトリをどんな風に迎えていたのだろう。
――なんとなく、想像できる。
きっと、こちらまで嬉しくなるような笑顔になったのだろう。『よく来たな』と両手を広げてくれたのだろう。
「(……リードァみたいに)」
穏やかな風が吹いて、木々の葉が音も立てずに揺れた。


 *********


「そっか。アトリとリードァって、あれだな」
唐突にリウが呟くと、アトリは夢から覚めたように瞬きをし、首を傾げた。
「あれって?」
「仲良いじゃん。ただの友達じゃねーし、親友ともちょっと違うし、天魁星同士通じ合う心の友って感じかなーと思ってた、ん、だけど」
「だけど?」
「兄弟なんだ。アトリは『あの人』の息子みたいな存在でしょ? リードァは実際息子だし」
「えッ!?」
弾かれたように顔を上げたアトリに、リウは吹き出した。
「いやいや驚かないでよ。あの人には子供がいて、トビラの事故で他の世界に行っちゃって行方不明で、アトリと同い年くらいなんでしょ? で、リードァは赤ん坊の頃に他の世界から来てる。オレは書の記憶であの人の顔も見てるし、それだけ情報もらえればさすがに気付きますよ。アトリだって何度か確かめるようなことしてたじゃん」
「そ……っか。うん、そうだよね。それ、リードァも?」
「あいつは、それだけ情報もらっても気付かなかった」
「あはは、そんな感じだった」
「けど、リードァから話を聞いてわかっちゃったから、オレが教えた。納得してたよ」
「そうなんだ」
ふわりと笑うと、良かったと呟いた。
「それも気がかりだったんだ、言った方がいいのかなって。言わないままでいようと思ったけど、リードァが知って納得してるなら、その方がずっといい。リウ」
ありがとう、と言いかけたアトリを、リウは軽く手で制した。
「アトリ」
「うん?」
「アトリとリードァは兄弟みたいだな、ってところからの話の続きなんだけど」
「? うん」
怪訝そうな表情を浮かべた彼の瞳を覗きこむと、リウは真顔で問いかけた。

「神獣の剣。リードァにあげちゃって、良かったの?」

すとん、と。アトリが無表情になった。
普段浮かべている柔和な笑顔も、真剣な眼差しも消えた、感情の見えない素の顔がリウに相対する。
それは妙な迫力があったが、リウは黙って見つめ返した。

しばらく見つめ合っていたが、最初にふうとため息をついたのはアトリだった。
同時にいつもの柔和な笑顔が戻ってくる。その笑顔を苦笑に変えて、彼は首を傾げた。
「今さら、リウから言われるとは思わなかったよ。どうしてそんなことを聞くの?」
「んー」
曖昧な返事をすると、リウは首を回して光を放ち続けているトビラに目をやった。
「このトビラさ、ずっと開いたままでいると思う?」
「ううん、思わない。もしかしたら今回だけかもしれないね」
「オレもそんな気がしてる。なんでだかわからねーけど」
だから、とリウは語気を強めた。
「だからさ。もしこれが最後だったら、今が、神獣の剣を返してもらうチャンスだよ」
「……あの剣は、リードァが持っていた方がいいと思ったんだけど」
「そう考えたんだろうなってのは理解してるよ。でも、あいつは物に頓着する奴じゃない。それに、とっくにいろんな物を持ってる」
「いろんなって?」
「端的に言えば、血。育った環境じゃなくあいつが生まれついて持ってる姿形とか物の考え方とか、運を引き寄せちゃうわけわかんねーパワーとか、そーゆーいろんなもの」
アトリから見ても似てるだろ?と同意を求められ、アトリは素直に頷いた。
「似てる。……息を飲むほどね」
「それがリードァが父親からもらったもん。だったら、アトリにだってあの人からもらったものがあって良いはずなんだよ。2人とも『あの人』の息子みたいなものなんだから。アトリは神獣の剣の他に何をもらってる?」
「……あの剣だけだったよ。あとは思い出」
アトリの目にかすかに苦渋の色が浮かんだ時、2人の脇の木立がザザザッと大きな音を立てた。

「なら、これはアトリが持っとくべきだな!」

思わず飛び上がった2人に構わず、現れた人物は小路の柵を身軽に乗り越えてきた。
「リードァ!?」
「お前、やけに遅いと思ったらソレ取りにいってたの?」
「ああ。あとちょっと立ち聞きしてた!」
「そーゆーこと悪びれずに言わないの」
「へへっ、悪ィ悪ィ。ちゃんと食いモンとかも持ってきたからさ」

2人と向かい合うように腰を下ろしたリードァは、腰に佩いていた剣を外し、アトリの前に置いた。
もちろん神獣の剣だ。
「実を言うとこないだから思ってたんだよな。これ、アトリに返せねえかなって」
それを聞いたアトリは、少し傷ついた表情になった。
「リードァ……。その剣、いらなかった?」
「まさか! アトリからもらったんだ、いらないわけねえだろ! 一なる王だってこれで倒したんだぜ!?」
勢いよく否定すると、「でも、この剣は特別だから」と小さく笑みを浮かべた。
「そうだよ、特別だからこそ―…」
「とりあえず聞いてくれ」
食い下がろうとするアトリを手で制すと、リードァは剣に視線を落とした。
「アトリは知ってるかもしれねえけど、オレもこの剣の由来を知ってる」
「由来……?」
「ああ、知らねえか」
まあ人に言う話じゃねえしな、と口の中で呟いて話を続けた。

「この神獣の剣は、もともと『あの人』の奥さんが使ってた剣だ」
「え!?」
なんでそんなことをリードァが知っているのか、疑問を口にする前にリードァがその答えを口にする。
「マナリルが書から記憶を受け取ったんだ。それで、あの世界に起きたことが少しわかった」
マナリルというのは仲間の一人で、書を”読む”才能があるんだよ、とリウが横から補足する。
「そもそも、あの世界の最初の天魁星は『あの人』の奥さん……オレの母親?の方だったんだ。でも、その人は志半ばで死んでしまって、『あの人』が天魁星を継いで、新しい団長になったんだよ。その時に、形見として神獣の剣も継いだらしい」
「そんな……!」
それは、アトリにとって初めて聞く話だった。
『あの人』が神獣の剣を特別大事にしていたのは知っている。だが、それが誰かの形見だとは知らなかったし、誰も教えてくれなかった。

だが、リードァの確信のこもった話し方からすれば、それは真実なのだろう。
つまり――妻から夫へ託された剣が、アトリを経て息子へと託されたのだ。

「待ってよ。だったら尚更、その剣はリードァが持っていないとだめだよ!」
剣をリードァの方へ押し出そうとしたが、「いいんだって」と、さらに強い力で押し戻される。
「ほんとにいいんだ。オレには星の印もあるし」
「星の印って、そんなの……」
「それが、こいつもちょっと特別なんだよ」
「特別?」
「ああ」
頷いたリードァが、少し複雑な笑みを浮かべた。
「≪輝ける遺志の書≫からもらったオレの星の印ってさ、少し前に変わったんだよ」
「星の印が……変わった……?」
アトリはきょとんと目を瞬いた。そんな話は聞いたことがない。
「最初は『あの人』の力の分だけだったんだろうな。こう言っちゃなんだけど、星の印としてはそれほど強くもない普通の感じだったよ。それが、変わったんだ。しかも、すっげー強烈なやつに」
「どうして……」
「マナリルが言うには、母親の星の印が加わって2人分の力になったんだろうって」
「リウ?」
思わず助けを求めるような視線を寄越してきたアトリに、リウは頷きを返した。
「2人分の星の印が一つになったんだろうってのは推測だけどね。変わったタイミングとかマナリルが書の記憶を読んだタイミングとかその内容とか、いろんな要素から考えて、オレもそれが正解だと思ってる」

「だからさ、アトリ。オレは持ってるんだ。ちゃんと。しかも、両親から受け継いだものを」
リードァは両手を地面につくと、アトリの目を正面から覗きこんだ。
一度視線を落として神獣の剣を見つめ、再び顔を上げる。
「それに気付いて、これはアトリに返さなきゃって思った。アトリがもらったんだろ? 『あの人』だって、アトリにあげたかったんだよ」
「でも、でも、この剣は、あの人とリードァを繋ぐもので……だから……だから僕が2人を」
「ああ、アトリが繋げてくれた。感謝してる。だから今度はオレが繋げたいんだ。『あの人』と、アトリを」
「で、でも」
「なんて言ったらいいのかなあ……えーと」
言葉を探して何度か頭をひねったリードァは、最後にうんと頷いて再び剣を差し出した。

「なあ、アトリ。――俺たち3人を、アトリの世界に連れてってくれ」
「……っ!? あっ……」
「そうだ。この剣には、オレと、『あの人』と、『あの人』の奥さんの気持ちが入ってる」

――『あの人』がアトリと交わした、アトリの世界へ行くという約束は、もう永遠に叶わない。
リードァがアトリの世界へ行くことも不可能だ。
それでも、だからこそ。
せめて――想いのつまった剣だけでも。

リードァがアトリの手をとり、その上に剣を乗せると、彼はもう拒むことをしなかった。
腰に佩いていた剣を外して神獣の剣をつける。そして、外したばかりの剣をリードァに差し出した。
「かわりに、この剣をもらってくれる?」
「おーさんきゅ! ……こっちはもう返さないからな!!」
リードァが剣を抱きしめるようにすると、アトリはほっとしたように笑った。




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たったひとつ?の冴えたやり方」 (星々の命を束ねたら…な話。 アトリ、リウ)1
受け継がれしもの」 (「受け継がれし遺志」のこと。 TK団長、マナリル+星屑団長夫婦)
薄明」 (TK団長の着替えイベント後、「あの人」との約束を思い出す。 アトリ、アトリ世界の軍師)

自分の中では繋がってるけど、数年前に書いたものを前提としていてすみません…
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2013/12/19 00:18 | Comments(0) | 二次創作

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