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んっ?
21日はキリルの日ですか?
某サイト様の日記を拝見し、勢いに乗るべくごそごそとネタ帳を探ってみました。

少し遅れたけど、とっても短いキリルさまSSを投下。
ラプソからずいぶん経った後、一人旅の途中です。



これは、いわゆる底本というやつだろう。
世間で流通しているものは歴史を素材にした空想物語と分類され、実際そのような内容に改訂されている。
それが真実を綴った日記を土台としていると知っているのは、おそらく世界で自分だけ。

だが、それでいい。『アレ』を手に入れようとする者が現れては困るから。

筆者である彼は『もう手に入れようと思っても手段がない』と言っていたけれど、あの短い期間だけで入口を作ることのできる魔法使いが2人もいたのだ。手段がないとどうして断言できるだろう。
危険だと気付いて告げると、彼はすぐに廃版にして物語に手直したものに差し替えた。そちらの方が売れたから版元も何も言わなかったし、最初に発行された日記はこの世から消えた。……今、持っているこの本以外は。

『忘れないで欲しい、それでも彼らは確かにそこにいたのだ』

彼の言葉は一体誰に向けてのものだったのだろうか。世界か、自分か。


「……聞くまでもないけどね」
表紙の上に手を置いてキリルは小さく呟いた。
自分が忘れるわけがないことくらい、彼だって百も承知だろう。それでも書かずにはいられなかった。
忘れないで欲しい、と。


言葉に出さずに通じ合えることでも、口に出すことでさらに強まることがある。
ページの向こうから、声が聞こえてくるようだった。


『私は貴方を忘れません。いつだって、どんな時だって、忘れることはありません。
 だから貴方にも忘れて欲しくないのです。
 忘れることはないと分かっているけど、それでも。……私達を。私達と過ごした日々を。
 思い出してください。
 私達は確かにそこにいました。それが思い出に変わっても、遠い遠い過去になっても、変わらず。
 思い出してください。
 たとえば今が辛ければ、あなたの幸せを祈っている私たちがいることを』


「……アンダルクの愛は、必死だね」
笑みを含んだキリルの呟きは果てしなく優しい。
顔を上げると、窓の向こうに浮かぶ満月を見上げた。


「分かってる。忘れないと、僕も叫んでいるよ。 この世界で――いつまでも」


皆と共に生きた自分は、ここにいると。
この世界から、百万世界のすべての世界へ向けて。
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2009/03/23 00:11 | Comments(0) | TrackBack() | 二次創作

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