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2024/05/17 20:17 |
見守る者
捏造・レックナート。
「天魁星がレックナートだったら?」と思ってメモし始めた長編のプロットから独立したもの(笑)。

「門の紋章は表裏に別れず、1つだったことがある」というマイ設定あり。
戦争の間がすごい勢いで省略されてます。
そして捏造した眷属紋章の名称が果てしなくショボい。
結構シリアス&しんみり? 3をふまえてます。






今は昔、古代と呼ばれる時代がさらに古代と呼ぶような時代のこと。
「門の紋章」は唯一の存在だった。
太陽の紋章と黎明・黄昏、
夜の紋章と月のように、
門の紋章を支える準・真の紋章的な存在が2つあった。



この世には、彼らが暮らす「現界」の他に無数の「異界」が存在する。
無数の世界は時に重なり合い、時に反発し合い、だがほとんどの場合、互いに緩衝せずに共存していた。
重なり合う世界のどれか1つが消滅していくのはよくあること。
だが、無数のうち1つがあまりにも巨大化した場合―――それは、周りの世界に影響を及ぼし、やがて全てを押しつぶした挙句自滅すると言われていた。

無数に存在する世界。
それは一見不変に見えて危ういバランス関係にあった。
それ故、各世界には、異界と上手くやっていくための力が存在していた。
この世界における力―――それが竜の紋章、そして門の紋章。

竜の紋章は、異界との共存を図る。
門の紋章は、異界とのバランス関係を保つ。
2つの紋章は多世界と絡み合うが故に分化し巨大な力を秘めていたが、異界があってこそ巨大な力を発揮する紋章は、現界においては特に目立つことはなかった。

竜の紋章は、竜と共に暮らす人々の中で守られながら世界を移ろい、
門の紋章は、異界を知る人々によって密かに守られ続けていた。


――――――異界の征服をも企んだ”彼”が現れるまで。


 *********


人里離れた森の中にひっそりと隠れるようにして存在しているその村は、住民が女性ばかりという特殊な村だった。
村の中に「家族」という単位は存在しない。強いて言えば村全体で家族だろうか。
年上であれば「姉」、年下であれば「妹」と呼ぶ。
そして全員が巫女だった。

村で生まれた子供は、それが男児なら密かにどこかへもらわれていく。
女児なら一所に集められ、幼い頃から巫女として育てられた。

だから、その村で暮らすレックナートは、自分をこの世に産み落とした女人を知らない。
彼女に種を植え付けた男のことなど、なおさら知る由もない。
定期的に村へ紛れ込んでくる男と、その男を言葉巧みに引き込む女を見て、ああして生まれてきたのだろうと推測するだけだ。
男は子が出来るまで村に据え置かれ、幾人かに種を根付かせた後はいずれかへ「放牧」されていた。彼らの行く末となると想像すら及ばない。

村で生まれた少女達は、ある年齢になると2つの紋章を順番に宿らされた。
宿して、すぐ外される。それにどんな意味があるのかは知らないが、それにより全員が「資格」を得るということだった。

村の女たちは、物静かで村の掟に従順だ。
自分達の生活に疑問を抱くこともない。教えられないからだ。
レックナートも例に漏れず、自分の人生に疑問を抱いたことはない。
少し年上で仲の良いウィンディと、花を摘んだり歌を歌ったり「お役目」について語り合ったりする穏やかな日々を送っていた。

だが、永遠に変わらないものなどあり得ない。
どんなに掟を守って生活していても、異端児というのは生まれるものである。
安定した時が長ければ長いだけ、気付いた時には取り返しのつかない状況になっているというのも――よくある話だ。

"彼女"は、ある男に恋をした。
彼は半年ほど前に村へやってきた男で、彼女を含め数人の女性が相手をしていたが、種を根付かせられたのはウィンディだった。
"彼女"は嫉妬に燃えた。
そして男は最初からそれを狙っていた。
なぜなら、彼は村で守られている存在を利用するためだけに訪れたのだから。

彼は、既にある国の王だった。
だが、さらに大きな世界での王となることを夢みていたのだ。
竜がいた世界、巨人がいる世界、優れた技術を持つ世界――全てを手に入れることを。


"彼女"はウィンディを襲った。
幸い一命はとりとめたが、子は失われた。

レックナートはウィンディの身体を支えながら、必死で"彼女"の後を追った。
だが既に時遅く、2人が辿り着いた時、門の紋章は"彼女"に宿っていた。

男と並んだ"彼女"が高笑いをする。
"彼女"の背後で異界への扉が開いていく。

"彼女"を止める力を――――――…
願った時、レックナートには門の眷属の片割れ『鍵』が宿り、ウィンディにはもう片方の片割れ『錠』が宿っていた。(眷属がショボ!)


門の紋章の暴走を止めるため、レックナートとウィンディは戦いに身を投じることになる。
竜の紋章の力を借りて。


 *********


戦いの果てに、門の紋章は暴走をやめ、分裂した。
門と眷属2つは互いに引き合い、3つは2つに分かたれた。
門の紋章プラス眷属の片割れ『鍵』で門の紋章<裏>に、
門の紋章プラス眷属の片割れ『錠』で門の紋章<表>に、
それぞれレックナートとウィンディの手に―――…


新たな真の紋章は、新たな呪いを生み出した。
異界とのバランスを保つ門の紋章。
それを持つ彼女達は、現界の内側に干渉できなくなった。
干渉すれば、壊れてしまう。壊してしまう。そして手の内には何も残らない。

何があっても、見守るだけしか出来ない。
手を出すことが出来ない。


そして、真の紋章は永遠を刻みはじめる


レックナートは己の目をつぶした。
苦しんで苦しんで、見ることしか出来ないのなら何も見たくないと。
だが、それは新たなる感覚を研ぎ澄まさせ、以前は見えなかったものまで見えるようになるという皮肉な結果に終わった。

ウィンディは世界の破滅を望んだ。
干渉すれば壊してしまう―――ならば、壊れてしまえばよい。
生まれてこなかった我が子の復讐を果たしてから、少しずつ歪んでいったのだろう。
異界から混沌の使者を呼び寄せ、世界の破滅を招くために呪われた力を望んだ。
だが、欲するほど、望むほど、一番欲しいものだけが手の中をすり抜けていくようになった。


時は流れる。


ウィンディは最後の最後で、心の底で一番欲していたものを手に入れた。
だが、手に入れていたのに気付かず――――気付いた時に、死んだ。

レックナートはその時にも手を出すことは叶わなかった。
ただ人知れず、館の奥で見えない目から涙を落とすだけ。
哀れな姉との別れに対する悲しみの涙。
最期に欲したものを手に入れた姉に対する、羨望の涙を。


 *********


レックナートの生は終わらない。
見守り続ける、見守るだけの生。
我が子とも思った最愛の青年が死に向かう、その時でさえ。



『バランスの執行者……人は私を、そう呼びます』

盲いた目に映る、数多の事象。
不審げな視線を浴びながら、淡々と告げていく。

『私はいつでも、あなた方を見守っています』

口元に浮かぶ微笑みの真意を分かる人がいるだろうか。
……見守るしか出来ない我が身への自嘲を。





天魁星、運命を築きあげる者よ。
――――私は、貴方に、なりたかった
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2007/05/05 23:55 | Comments(0) | TrackBack() | 二次創作

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