今日はいい天気でしたね。
というわけで、フッチでSSS。
2軸です。
というわけで、フッチでSSS。
2軸です。
昼を知らせる号砲が響き、訓練をしていた軍は一時の安らぎに包まれた。
歩兵隊の一員として訓練をしていたフッチは、ほっと息を吐く。
そっと辺りを窺うと人々の輪から外れ、小高い丘を越えると少し下がった草地に腰を下ろした。
背後の小さな丘がフッチと軍とを分かち、人の姿が見えなくなる。
かわりに目の前に広がった穏やかな景色に目を細めると、弁当も開かずごろりと横になった。ぽかりと浮かんだ雲がゆっくり流れていくのを見るともなしに目で追う。
その顔に影が降りたかと思うと、日に焼けた細い足が視界に飛び込んできた。
「なぁ~にさぼってんだ、フッチ」
「今は休憩時間だよ」
「だからって魂抜けたような顔してんじゃねえよ」
逆さに覗き込んできた顔が笑っている。
それに笑い返しながら、フッチは頭の後ろに手を回して枕にした。
「天気いいよね。訓練してるのが勿体無い」
「いい天気だから訓練してんだろ」
軽口を叩くと、チャコはうーんと気持ち良さそうに伸びをした。
「まあ分かるぜ、こんな天気はのんびり空飛んでたいよなあ!」
それには答えず、フッチは口だけで笑う。
ぽんと飛び上がったチャコは青空の中でもう一度思いきり身体を伸ばした。
黒い翼が逆行となってチャコの輪郭を消し、一つの影となる。
目を細めてその動きを眺めていたフッチは溜息のような息を吐き出した。
「なんだ?」
「翼があるのが羨ましいと思って」
「欲しい?」
「うん。……あ、ううん」
「どっちだよ」
黒い翼を持つ少年が声を上げて笑う。
「よく分かんない」と答えて、フッチも笑った。
空を見上げる。
白い雲を背に友人が浮かんでいる。
「飛びたいなあ」
自身が翼を持つのではなく、翼ある友と一緒に。
雲より高い場所で受ける風を思い出しながら、フッチはぽつりと呟いた。
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