拍手お返事、今日はこちらでさせてください。
えっと、本日17:14に拍手をくださった方。
『拍手SSにテッドがマクドール家に行ったら誰もいなくて…っていうのが』
あれ?なんか覚えがあるような……と、ファイルの中を探してみました。
ありました…!!
HP内にはアップしてなかったです。
そして拍手お礼に使っていたのは、2006年の8月でした。
お、覚えていてくださったのですか…! ありがとうございます…!!
読み直してみたらなんだかとても拙い感じだったのですが、つづきに載せてみます。
テッドと坊です。こちらで合っているでしょうか?
えっと、本日17:14に拍手をくださった方。
『拍手SSにテッドがマクドール家に行ったら誰もいなくて…っていうのが』
あれ?なんか覚えがあるような……と、ファイルの中を探してみました。
ありました…!!
HP内にはアップしてなかったです。
そして拍手お礼に使っていたのは、2006年の8月でした。
お、覚えていてくださったのですか…! ありがとうございます…!!
読み直してみたらなんだかとても拙い感じだったのですが、つづきに載せてみます。
テッドと坊です。こちらで合っているでしょうか?
2006年8月6日更新・拍手SS(再掲)
「こんち…はーーー…」
大きく張り上げた声は途中から不自然に小さくなって、語尾が途切れた。
最初に口を開けた時に浮かんべていた、活発そうな明るい表情が瞬く間に雲っていく。
テッドは、静かな玄関の前で立ち尽くした。
「(待て待て。昨日、明日って言ってたよな。ってことは今日だよな)」
くるくると忙しく頭を働かせる。
うん、確かに昨日だった。
昨日はレンの家には行かなかったが、逆にレンがテッドのバイト先に来た。
店長に睨まれない程度に雑談を交わすと、翌日遊ぶ約束をしたのだ。
『テッド、また明日な!』
『ああ、また明日な、レン!』
他愛のない約束。
だが、"明日"の約束に縁のない生活が長すぎたせいか、レンと交わす約束はどんなに小さいものでも一つ一つがわくわくするほど嬉しかった。
「―――…レン?」
閉ざされた扉に向かって、小さく声をかける。
だが、人の気配を読むことに長けたテッドの感覚は、その奥に人がいないことを悟っていた。
誰もいない。
その認識が、突然ざわりとした悪寒になって背中を駆け上がってくる。
ここは庶民の家とは違う。
やたらフランクだが、れっきとした大貴族の家だ。
その割には住んでいる人も少ないが、それでも人がいなくなることはあり得ない。
グレミオやクレオやパーンやテオや、皆が出払った時でさえしっかり留守の者がいる。
なのに、いない。
しーんとした沈黙は、逆にうるさい。
音のない音がわんわんと響き、頭の中にある警鐘をがんがん鳴らし始めた。
「(何かあったのか?家から人が出払うほどって、一体何が?テオ様の身に何かあったのか?まさかレン……)」
そこまで考えた時、手袋の下がじくりと疼いた。
びくりと肩を飛び跳ねさせたテッドは、ぎゅっと固く拳を握り締める。
『また明日な、レン!』
自分の言葉が頭の中でぐるぐると渦を巻き始める。
なんであんな約束をしちまったんだ。思い上がっていたんだ、最近は奴とうまくやっていけてるって。
ああ、俺は馬鹿だ。
例外があるわけないのは分かっているのに。一体何度こうして失敗すれば気が済むのだろう。
失って、欲しがって。
欲しがって、失って、…………失って、失って。
レンだけは失いたくないのに。
だが、そう思うことが既にレンを失う理由になる。
自分の鼓動の音ががんがんと響く。
テッドの呼吸が荒くなる。
眩暈がする。視界が灰色に染まっていく。斜めに傾いでいく。
……立っていられない。
助けてくれ――――…
「テッド!」
声と同時に肩を掴まれた。
とっさにその手を振り払うと、一瞬で距離を取る。
荒い呼吸の中で相手を睨み付けると、にごった視界の中で何かが揺れた。
はじめは、ただ赤い色としか認識できなかった。
それが次第に形を取り始め、輪郭を持ち、そして……
「テッド、どうした!?」
「……………レン?」
たっぷり沈黙した後でようやく搾り出した声は、我ながらみっともないほどかすれていた。
無事だったという安堵で力が抜ける。
ずる、と崩れ落ちるように座り込んだテッドに驚いたレンが駆け寄って腕を取る。その温もりに心からほっとしつつ、同時に心の底が冷えていく思いに囚われていた。
……こうして安堵することが後の絶望につながるのだ。
「大丈夫か?すぐに帰るつもりだったんだが、留守にしていて悪い。家の者はどうした」
「……誰も……」
「誰も?……グレミオ!」
「はい、坊ちゃん!……ああテッドくん!どうしたんですか!?」
「家にいなかったのか?」
「え?いえ、いましたよ。業者が来たので軽く外で打ち合わせはしましたが、それも5分かかっていません」
「その間に来たんだな、テッドは」
「とにかく、早く部屋に。テッドくん、歩けますか?」
気遣わしげに差し伸べられた手を、頭で何か考える前に身体が拒絶した。
ぱしん、と音を立てて払いのけると真っ青な顔をしたまま駄々をこねるように首を振る。
「テッド?」
「……俺に、関わらないでくれ」
口にするのも懐かしい、このフレーズ。
レンとグレミオの目を見ないように顔を背けて、壁づたいに立ち上がろうとした。
そのまま背中を向けて立ち去るんだ。一刻も早く。
この安堵が、絶望に変わらないうちに。
「テーーーッド」
だが、数歩もいかないうちにひどく間延びした声がテッドの決意を容赦なくさえぎった。
同時にスパーンと小気味いい音が足元で響く。
棍が足を払ったのだと気付いた時には、テッドは空を見上げていた。
背中に地面。芝生の中に沈められたと気づいたのは、少し経ってからだ。
「ぼ、坊ちゃん!病人になんてことするんですか!」
「グレミオは黙ってて。そうだ、パーンを呼んできてくれないか?」
「……いいから関わるな……」
「しつこいな。関わるよ、僕は」
上半身を起こすと、グレミオがあたふたしながら立ち去っていくのが見えた。
見送るテッドの肩が、がしっと掴まれる。覗き込んできたレンから顔を背けても、背けた方へ首を伸ばしてきた。
ぐぐ、と、2人して顔を横に動かす。
互いに首が痛くなったところで「馬鹿」とポカリと頭を殴られた。
「いいか?不安なことなんて何もない。何にもない」
「……」
「また明日って言ったよな。僕も言ったしテッドも言った。だったら今日になって逃げる理由はないよな」
大体うちまで来たんだし。
そう続けると、レンはテッドの前に背中を向けてしゃがみこんだ。
「……?」
「ほら、おぶされ」
「……やだ」
「我侭言うな」
「じゃ、俺が担いできましょうか」
割って入った太い声が、軽々とテッドの身体を持ち上げた。
「パーン」
「すいませんね、坊ちゃん。ちょっと地下室に潜ってたんで気付きませんでした」
「ちょ……下ろせよ!」
「と言ってますが、どうします?」
「僕の部屋まで担いでいって」
「了解です」
じたばたと暴れてみたが、抵抗むなしくパーンによってレンの部屋へ連行され、そこでぽんとベッドの上に放り出された。
待ち構えていたグレミオにちゃきちゃきと靴を脱がされ服を脱がされ替わりに寝巻きを着せられ、どうですか?と勧められて思わずお茶まで飲んでしまった。飲んで気付いたが酒入りだ。瞬く間にうとうとしてくる。
すると見計らったかのように部屋から人が消えていった。いつの間にか、レンまでいない。
一人ベッドの中に取り残されたテッドは、それでも寝入ることはなかったが、うつらうつらとし始めた。
やがて、日も傾き始めた頃。
軽いノックの音がしてそちらに目をやると、ひょいとレンが顔を出した。
「あ、起きた起きた」
「ずっと起きてたぞ」
「分かってるけど、目が覚めただろ」
からりと笑うと扉を開け、木の盆を片手に部屋へ入ってきた。
ぶすっとしながらテッドの視線がそれを追う。盆の中に入っているものを見て軽く首を傾げた。
「何もってきたんだ?」
「あ、これ。これを買いに行ってたんだよね。テッドって南のものが好きだろ?だから……」
じゃーーん!と大仰な効果音を発しながらレンが置いたのは……なんだろう。
「何だ?それ」
「……あれ、知らなかった?」
思い切りあてが外れたという顔をしたレンが、きまり悪そうに盆の中のものを手に取った。
「群島伝統のお菓子らしいんだけど。烈火竜まんじゅうって言うんだって」
「……まんじゅうか」
「あまり見えないよね。色は赤いし、外側がおせんべいみたいに固いし。なんでも海を守る神様の大好物らしいよ。かつて、群島諸国が危機に陥った時に現れて英雄を助けてくれたんだって。で、英雄はそのお礼にと神様の好物のおまんじゅうを捧げたって話」
「……ふうん……」
「でもこのおまんじゅうを作ったのは神様なんだって。遺跡を守っていた竜を倒して肉を手に入れたのもその神様とか。それじゃ捧げる意味ないよな?よく分からない伝説だった」
「……ぶっ」
小さく噴出したテッドをレンが不思議そうに眺める。面白い?と聞かれてテッドは首を上下に動かした。
おまんじゅうが好きな海の神様。
遺跡に潜って竜を倒して自分で材料を手に入れてしまう神様。
自分で作ったまんじゅうを捧げられるという一見理不尽な行為を喜んで受ける神様。
心当たりがありすぎる。
なるほど、戦後生き延びたのは知っていたが、そんなことをしていたわけか。
ふっと脳裏にその『神様』の顔が浮かんできた。
蒼い瞳をきらめかし、楽しげに首を傾げた彼の姿。
『俺のように……?そうだね、それはテッド次第じゃないかな。きっと出来るよ』
お前のように生きられるのかと問うた自分への答え。
数十年前にも一度会った。
何も聞かず、何も語らず、ただ楽しげに笑っていた。
『見つけられたんだね』
自分の目を見て、嬉しそうにそう言った。
――そうだ。
見つけられたんじゃないか。
彼のように生きる道を。
人を恐れず、人の中で生きていく決意を。
そして得たんじゃないか。
レンという親友を。
「あー…」
テッドはまんじゅうに手を伸ばしながら、反対の手で頭を掻いた。
「さっきは、悪かった…な」
「気にしてないからいいよ。……なーんて言うと思ったか!」
途中で言葉の勢いが変わったかと思ったら、ぽかりっと頭をはたかれた。
だがそこに力はこめられておらず、声も笑っている。
「僕は結構ショックだったんだからな」
「わりー、わりー。ちょっと気が弱くなってたんだよ」
「許さない。罰として……」
レンは言葉を切ると、ひょいとテッドの顔を覗き込んだ。
黒曜の瞳がきらりと光る。漆黒の、美しい宝石。
闇と同じ色の、でも闇とは対極の光を宿す、テッドの好きな瞳。
「明日こそ僕と一緒に遊ぶこと!それまでに治せよ」
「もう元気になった、なった」
「じゃ、夕飯を一緒に食べられるな。今日はそれだけでいいよ」
「わぁった。じゃあ、明日な」
「うん、明日」
新しい、小さな約束。
いいじゃないか。
そうテッドは心の中で思う。
いいだろう?
そう心の中で問いかける。
お前と俺は、結構うまくやれるよな。
300年でたった一人だけだぜ?それくらい守らせてくれるよな。
いや、守ってみせるからな。
いい関係でいようぜ、相棒。
明日になったら。
テッドは再びこの家の前に立つだろう。
「こんちはーーー!」
と、今度は元気よく声を上げるだろう。
ちなみにファイル名は「こんちは」でした。カナックかと思ったww
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