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@カウロン
週末があっという間に過ぎていくよ……

何をしていたのかと言うと、ウィルスチェックとメールチェックと、あとはまあ私事でごちゃごちゃと。

星屑をまた読んでたのですが、7章できゅんときた!
そう言えばそうだった、トッシュってば最初リーオーに忘れられてたんだったw
『初対面です』と言われて違うだろうと拳を握り締めるトッシュがなんだかかわいい。
そう言ったものの何だか気になってトッシュをちらちら見ちゃうリーオーがかわいいいいーー

ああほんと、この2人は可愛いな! という勢いで、いっこSSを置いていきます。
星屑7章で、カウロンに≪星の兵団≫がやって来た時の謁見。トッシュとリーオーです。
今回は小説のネタバレが激しいのでご注意。



レオノス王国の王都・カウロン、王宮内の謁見の間に彼らはいた。
正面奥の玉座は数段高い場所にあり、王を守るように左右に3人ずつ守護騎士が控えている。
謁見の間の中央に立っているのは5人。その武勇を大陸にとどろかす≪星の集団≫の代表としてやって来た彼らは、不自然なほど若かった。4人はまだ子供といって良い年齢で、唯一の年長者である男は引率者のようにも見える。
しかし、静かな目で見上げてくる彼らにレオノス王国の面々は完全に圧倒されていた。


  ― きみに再会の言葉を ―


トッシュは、壇上にいる7人のうち、ただ一人を見つめていた。
静かな瞳に引き締められた口元。場の雰囲気に臆した様子もなく立っている姿は、年の割におとなびた、落ち着いた態度に見えるかもしれない。
だが、両脇に垂らした拳は、先ほどから指の関節部分が白くなるほど固く握り締められていた。




『これが初対面です』

――何のためらいもなく、そう言われた。

表情は変えずに、トッシュはただ拳を握り締める。
こうなることは分かっている。
融合が人の記憶に残らない以上、人々の記憶は現在に沿うように変えられてしまう。
覚えているわけがないのだ。国王をはじめとする王国軍が、リエズ平原と共に消えてしまったことなど。
政治力に長けた狷介な国王と軍の大部分を失ったレオノス王国は、今では若い国王の下で大した軍事力を持たない弱小国となっている。状況を把握してから≪星の兵団≫の首脳陣が推測してみせたことは、カウロンへ足を踏み入れた時に全く的を得ていたと分かった。

ダイラス王の遠征という事実が消えた以上、トッシュたちがダイラス王率いる王国軍と戦った過去も、当然消えてしまっている。リーオーが覚えていないのも無理はなく、むしろ当たり前のことなのだ。


分かっている。


だが、この悔しさは何だろう。


ジェマイアと共に彼女が現れた時、トッシュはひそかに安堵の息を漏らしたのだ。
――無事だった。
ガレガドとジェマイアの戦いが危ないと見るや、素早く身体を翻してトッシュの目の前から消えた。
その時の、ふわりとなびいた金髪が、なぜか心に焼き付いていた。

ジェマイアが融合を免れた情報は入ってきたが、その他の兵士のことは分からなかった。
かろうじて分かったのは、難を免れたのはジェマイアと共に帰還していた負傷兵だけだということ。
その時点で、トッシュは絶望感に襲われた。なぜなら、トッシュは彼女を傷つけなかった。いや、防護結界が強くてそんなことはかなわなかった。あれだけ前線にいながら、戦闘が終わるまで無傷で戦いぬいた少女。負傷兵と共に帰還したと信じるには、あまりにも希望的要素が少なかった。

無事でいればいいと思うたびに、言いようもない苦しみに襲われた。
あの時何をしてでも止めていれば――と、何度も何度も後悔して。
ガレガドが病室に閉じ込められていた間、トッシュも部屋の片隅にうずくまって動けずにいたのだ。
団長に声をかけられなければ、まだ後悔し続けていたかもしれない。≪オルダ≫が巧みに突いてくる心の隙とは何か、初めて実感として理解した。

それだけに、リーオーの姿を見た時に覚えた喜びは自分でも意外なほど大きかった。
多くの仲間の死を覚えていないであろうことへの哀しみを感じたのは、彼女の無事をひとしきりかみしめた後だ。


なのに――…初対面だと言われた。


「(違うだろう)」

頭では分かっているのに、心が納得してくれない。
再会を喜んでいるのが自分だけであることに、言いようのない理不尽さを覚えてしまう。

「(戦ったじゃないか。オレの攻撃を弾いた。そのせいで苦労したけど、オレはすごいと思ったんだ)」

彼女だって、単に戦いの相手という目だけでこちらを見ていなかった。
トッシュの攻撃を受けた時に驚いたように目を見開いたのを覚えている。
バッと顔を上げてトッシュの目を見つめてきた。それは決して、敵意や嫌悪ではなかった。

それなのに、知らないと言うのか。今が初対面だと言うのか。
自分たちが立ち去る時も、何か言いたそうな表情でこちらを見ていたじゃないか。

「(リーオー)」

声に出さずに呼びかける。
戦いの最中に聞いて覚えていたその名を、心の中でも呼んでみるのは初めてだった。
心の声が聞こえたかのようにリーオーがこちらへ顔を向けたが、トッシュの視線とぶつかると目を逸らした。
しばらくして、ちらりと視線が向けられる。そして、また逸らされる。

「(リーオー)」

何度めかにトッシュへ視線を向けたリーオーの眉が、わずかにひそめられた。
見られていることへの嫌悪ではなく、何かを思い出そうとするような表情。


――希望はある。


現状に違和感を感じている者がいるかもしれない、そういう人は星を宿す者である可能性がある。
そう言っていたのはキャリオだ。そういう人を見つけたら名を覚えておくように、と言われている。
その点、リーオーには希望がある。

そこまで考えたところで、トッシュは視線を逸らした。

「(希望って、一体なんの希望だ)」

今回の融合によって、国のありようが変わってしまうほどの大人数が失われている。
それを思い出すことは彼女にとって苦しいだけではないのか。
結局、自分のために思い出して欲しいだけではないのか。
視線を戻すと、彼女はまだ怪訝そうな表情を浮かべたままこちらを見つめていた。


「(……でも、それでも)」


思い出して欲しい。
あの戦いで何かを感じたのが自分だけではないと教えて欲しい。
わがままで勝手な願いかもしれないけれど。

「(…リーオー。オレは、はじめましてから始めたくないよ)」

ずっと平静を保っていたトッシュの顔が初めて歪んだ。
それはわずかな表情の変化だったが、対するリーオーの瞳が揺れる。
その動きに合わせるように、彼女の金髪が小刻みに震えた。



 *********



初めての出会いは、リエズ平原。
――そこで「はじめまして」は言えなかったけど。



2度めの出会いは、王都カウロン。
――ここで、再会の言葉を伝えたい。


もし、それが叶うのならば。


3度めからは、きっと一緒にいられるだろう。

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2009/05/25 02:52 | Comments(0) | TrackBack() | 二次創作

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