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遠い日没
なんだか眠れません。

うそです。
ユンケルと冷えピタをお供に超がんばって起きてますw
このまま朝までがんばるぞおおおおお!!

……などという個人的なことは置いといて。

先日から「これアップしたことあったけかな?」と眺めてるSSがあるんですが、
なんとなくなさそうなのでアップしてみます。
2主単体はなかった気がする…けど、どうだったかな。読んだことあったらごめんなさい。

2EDからはるか未来の2主@キャロ。
ちょっとシリアスです。ひとりぽっちの2主でもおkという時間に余裕のある方へ!


※2主=イリク。EDからはるか先の未来


草原の先に続く山の中腹あたりに霞に紛れていた街が見え始めると、身体に力が漲った。
歩く速度は自然と上がり、やがて押さえきれずにイリクは走り出した。

一気に残りの道を走り抜け、開きっぱなしになっている門をくぐって街へと入る。すれ違う人の中に懐かしい面影を残した者はいなかったが、勝手知ったる風に駆けてゆく彼に不審の声がかけられることはない。
そのまま、誰にも見咎められずに目的の場所に辿り着いた。

街の西はずれにある、崖に面した高台の土地。そこにはむきだしの土が広がる空き地があった。その空き地を包み込むように、コの字の形で丘となっている。
村の中央から続いていた道はここで丘の上と空き地と二手に分かれていたが、イリクはまず空き地へ向かった。
一番奥は丘との高低差が最も大きく、小さな崖のようになっている。

かつて、そこにはくっきりと人型がついていた。
他でもないイリクがめりこんだ痕だ。
風雨にさらされた崖には、今では痕跡すら残っていない。
長い年月は、崖に残っていた人型どころか、養父の遺した道場すら跡形もなく地上から消し去っていた。
だが、それは仕方のないこと。むしろ空き地が空き地のまま残っていることが驚きだ。老朽化した道場が取り壊されたのは、もう随分昔のはず。昔のことを知る者もいなくなり、以前よりずっと人口も増えたこの街で、開発の手が及んでいないのは予想外だった。

さらに驚いたことには、かつて裏庭だった場所に昔と変わらぬ見慣れた石が残っていた。
当時から墓か記念碑か分かりにくかったが、年月によって表面を風化させた巨大な石は、さらに何のためのものか分からなくなっており、そのくせ妙な威圧感を感じさせるシロモノに変わっていた。
石の前には古びた花瓶が一つあり、そこら辺で摘んだと思われる小さな白い花束が簡素ながら供えられている。
養父と姉が眠る墓がこの街の人に何と思われているかは知らないが、今も花を手向けてくれる人がいるという事実に胸が熱くなった。

両手を墓石にそっと当てると、ひんやりとした冷たさが心地いい。石の表面を覆っている苔の含んでいる水分が、手から熱を奪って空気に還っていく。
イリクはしばらく瞳を閉じてじっとしていたが、やがて労わるように石を撫でて身体を離すと、今度は丘の上へ続く坂道へ足を向けた。

思い出に残る巨木は、一回り小さくなってイリクを出迎えた。
見上げなくとも枝ぶりが異なることは一目で分かる。代替わりした二代目はそれでも立派な体格で、ここに根付いてから普通の人の一生分の時間はとうに過ぎていることがうかがい知れた。

幹に右手を預け、身体をひねる。目に飛び込んできた光景に、イリクは静かに息を飲んだ。
どこまでも続く針葉樹の森。
その向こうに見える褐色の山々とくぼんだ稜線にはまり込むようにして沈んでいく夕日。
これは、かつて何度も見た光景だ。何度も、何度も。
昔は針葉樹の中に広葉樹も混ざっていたし、森はこれほど広くもなかった。山々はもっと灰色に近い色をしていたようにも思う。だが、紛れもなくこれはイリクに馴染んだ景色。

人の世は進んでは戻り、科学技術も紋章術も進歩と後退を繰り返しながら、それでもゆっくり前へ進んでいる。
それに伴い人の暮らしも進化しては懐古に走り、それでもやはりゆっくり変わっていった。
イリクの故郷であるこの街は、既に「キャロ」と呼ばれていない。それも変化の一つだろう。

時代は移る。そこに住む人の顔は変わり、自然は少しずつ変化する。
だが、故郷はやはり故郷で、そこから眺める景色もやはり故郷の景色だ。
風が出始め、ざあっと木々が葉を揺らす。
沈む夕日が空を赤紫に染め、山にかかる雲の端が鮮やかな桃色に輝いた。


ふと、
傍らに懐かしい気配が寄り添っているのを感じた。


『ねえねえ、すごいよ! きれいだねえ!』

息を切らすのは誰の声。

『本当だね。おひさまが吸い込まれてくみたいだ』

穏やかに同意するのは誰の声。

『お前達、そんなに目をまん丸にしていたら落っことしてしまうぞ』

笑い含みに言うのは誰の声。


『さあさあ、家へ戻ろう。夕飯が出来ているよ』
『ねえじいちゃん、またこんな夕焼けが見られるかな?』
『ああ。きっと何度でも見られるだろうよ』


腰を下ろし、二代目の木に背を預けて、イリクは目を細めた。
さすがじいちゃん、嘘は言わない。


「(そうだね。――…きっと、何度でも)」


見えない誰かに、教えるように。

ほとんど姿を隠した太陽を、イリクはまっすぐ指差した。





少しだけパラレルです。ナナミとジョウイの扱いについては、なんとなく考えてることもあって(バッドEDには変わりないんですが)。
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2010/02/04 02:21 | Comments(0) | TrackBack() | 二次創作

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