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星屑の裏側
拍手ありがとうございまーす!!
すみません、週末にまとめてお返事いたします。ラプソばんざい! 魚人ばんざい!
魚に本気すぎるよ! というツッコミに自分で「ほんとにな!」とツッコミ返してしまいました。
999からなぜこんな方向へ転がっていったのか自分でも分からないんだぜ。
某所のラプソ動画に魚人で一番乗りしたその日から、全て決まっていたことだったのです……(ほんとか)

あ、そういえばトップには書いてませんが星屑ページの「最後の晩餐」という話を地味に改訂しました。
星屑を読み返した時に致命的なミスを発見してしまったのです。
かなり感情移入して書いた話だっただけにショックでした。自分の読み込み不足に…

登場キャラ紹介も、しばらく前に修正を加えています。ついでに各キャラ1つずつ台詞抜粋。
このキャラ紹介は、アトリ以外の全員が「死亡」で終わるのがなんともせつないです。


そして星屑な流れでSSを1つ。
各章の裏側シリーズということでできれば12個書きたいと思っているのですが、今年中に終わるかは未定です。
今まであまり書いてない組み合わせでいきたいと思ってます。

というわけで、第一陣。
第1章の裏側で、軍師とシャリヤル。
冒頭に本編を抜粋して引用してます。



裏側シリーズ:第1章


精悍な面構えの男が軽く手を挙げた。
「団長殿。ひとつ提案があるのだが」
  ・
  ・
  ・
「いや、それはダメだ。状況が読めないからこそ、俺たちは先頭に立つ。みんなを捨て石にするようなマネはできない」
団長は真剣な面持ちで反論した。女剣士と拳闘士もうなずいている。

そこで、なぜかシャリヤルはニヤリと笑った。
「――だそうだ、軍師殿」
それを受け、軍師も苦笑する。
「困るな、シャリヤル殿。内幕をバラされては」
「隠しごとができぬ性分でな」

「どういうことだ?」
「私が提案してはカドが立つゆえ、シャリヤル殿に代弁していただいたのだよ」


(第1章「決戦」その1 より)

============================================================




軍議が終わったのはそろそろ深夜にさしかかる時刻だった。

長い時間話し合ったような気がするが、最終的に決まったのはひどく単純な策。
席を立ちながら、シャリヤルはそれで良いと胸の内で呟いた。
正攻法で攻めるべき時は存在する。そういう時には細かな策を弄したりせず、まっすぐ正面からぶつかるべきだ。
それだけの力はある。――それだけの力を、ようやくそろえることができた。
ほんの少し、ほんの少しだけわだかまりは残っている。
だが、口にすべきではないとシャリヤルは心得ていた。軍人たるもの、決定されたことには従うのみ。

あとは明日に備えて休息を取るべきだ。
そう考えながら広間の入口に向かって歩き出したシャリヤルは、そこで視線を感じて顔を上げた。
さっと部屋の中を一巡するように見回す。
一瞬だけ、一人と目が合ったがすぐに逸らされた。

何事もなかったかのように傍らを歩く人と話しながら出て行った背中を見送り、シャリヤルは小さく息を吐いた。
――まだ、軍議は終わってないらしい。


 ************


「軍議ではない。話は決まっただろう」
「ならばこれは何なのだ?」
「決まっているだろう。決戦前夜に飲み交わそうというのだ」
「はて、我々はそれほど仲が良かっただろうか」
「ずいぶんと傷つく台詞を吐いてくれるではないか、シャリヤル殿」
「傷ついたか。それはすまんな、軍師殿」

生真面目な顔で謝罪の言葉を述べるシャリヤルの横顔をこちらも真顔で眺めていた軍師は、ふいに吹き出すと目の前のグラスを手に取った。
場所は酒場。カウンター隅のもっとも暗い場所に2人で並んで座っている。
確かに軍議という場所ではなかったが、これまでもこの軍師はここへシャリヤルを呼び出しては軍議の続きのような話を聞かせている。シャリヤルにとってもありがたいことではあったが、時折えっと思うようなことも要求してきたりするので油断ならない。

ちなみにその最たるものは、少年少女の多いパーティーに率先して入るようにというものだ。
以前はバランダンがその役につくことが多かったが、いつぞやかこの場所に呼び出された時に、次回からはお前が立候補するようにと言われた。友人同士、または同郷の者同士は連携もうまく取れるし大目に見る、だが親子は離した方が良い。団長は自分が子供と生き別れてるせいもあり無意識のうちに彼らを一緒に組ませようとする。自分が言ってもよいが、シャリヤルから言った方が受け入れられやすいということだった。

なぜ自分に?というシャリヤルの問いに対して、彼は小さく笑った。
「振り回されず、もっとも冷静に状況分析できる者をと考えただけだ。……面白そう、というのも少しだけあるがな」
後半こそが本音だと今でもシャリヤルは確信している。
なぜなら、ガレガドと衝突している時など、にやにやしながら遠目に眺めていることが多いからだ。
以前うっかり口を滑らせた「ガレガドを見てると昔の自分を思い出して時々いたたまれなくなる」という言葉をしっかり覚えているのだろう。

そういう話でなくとも、この軍師はこちらの表情や仕草から何気なく情報をすりとっていく。
どうにも油断のならない相手なのだ。

「だが、私と話すのは嫌ではないのだろう? むしろ楽しいとすら思う時がある」
「勝手に人の心を読まないで欲しいものだな、軍師殿」
苦笑して、シャリヤルも自分のグラスを手に取った。
そう。油断のならない相手だと思っているし、後から面倒を押し付けられたと頭を抱えることもあるが、それでもシャリヤルはこの軍師が嫌いではない。自分のペースを崩されるのが楽しいとすら思うこともあるのだ。
結局のところ、馬が合うというやつなのだろう。

「さて。では何の話を? この戦が終わったら何をしたいか、とか?」
「クドラトの武人からそれを聞くのは楽しそうだな。遺言は故郷に伝えよう」
「まさか、俺が話すわけなかろう。聞くだけだ」
クドラトの民には、戦の後のことは戦の後で考えろという格言がある。
戦が終わったらあれがしたい、これがしたいなどと口にする者に限って早死にをするという意味であり、一戦に全力をかける彼ららしい。
知っているだろうと思いながら話を振ったが、やはりこの軍師は知っていた。

「この戦が終わったら次にすべきことなら考えているがな」
「軍師ならば当然かと」
「ああ。だが、まずはこの戦だ」
軍師はくいとグラスを傾けると、横目でシャリヤルを眺めた。
「というわけだ。シャリヤル殿、作戦のどこが不満だ? ここで吐け」
「…っ」
思わず酒を噴出しそうなるのをぐっとこらえて顔を横に向けると、軍師の鋭い視線が迎え撃った。

――軍議の最中に抱いたわだかまりは、ほんのわずかな小さなものだった。
言葉に出していないのはもちろん、表情にも出してないはずだ。
さらには、軍議の終わりにこれでいいと納得したはずだ。
それなのに、この男は、こんなことまで見抜くのか。

口ごもったシャリヤルを鋭い視線で眺め続けていた軍師は、唐突に口の端を持ち上げた。
ニヤリ、と。

「その考えを、明日、皆の前で提案してくれないか」
「……は」
「第三陣があっても良いのではないかとな」
「……それが本題か」
軍師の考えていることを察して、シャリヤルは苦笑を浮かべた。

ほんの少し感じたわだかまりは、団長が第二陣に入っていたこと。
第一陣が≪秩序の柱≫の守備隊に攻勢をかけて防衛線に穴を空け、第二陣がその突破口から塔に突入して上階を目指す。
一見、第二陣の方が労力が少ないように見えるが、塔に突入した後にどれだけの敵がいるのか分からないのだ。
先陣を切るつもりだったらしい団長を第二陣で納得させただけで良しとしていたが、出来ることなら第二陣が塔に突入し、あらかた敵を葬ったところで満を持して団長につなげたい。彼は≪星の兵団≫を代表するという以前に、団で一番の実力者なのだ。
第三陣、という考えではなかったが、塔への突入は最後まで待ってもらいたいとちらりと考えていた。
どうやら軍師も同じことを考えていたようだ。

「……待ってくれ、軍師殿」
「なにかな、シャリヤル殿」
「身代わりを狙っていたな?」

団長を最後にしたいと考えていた。だが当然、彼は一人でいるわけではない。
常に複数人のパーティーを組んでいるし、今回は大事な決戦だから≪星の兵団≫の最強メンバーを揃えている。
つまり、横にいる軍師を含む3人だ。

軍師は最初から団長は最後になるべきだと考えていた。
それが団長にとって一番負担が少なく、また≪星の兵団≫にとっても利益となる。
だがその提案は彼からはしづらかった。なぜなら、団長が最後に回れば彼と行動を共にする自分も最後に回るということになるからだ。

「貴殿がそんな遠慮をするとは思わなかったが」
「何を言う……と言いたいところだが、正直なところ進言することにためらいはない」
あっさり認めてから、軍師は再びニヤリと笑った。
「だが、シャリヤル殿が妙な反応をしていたからな。そちらから言ってもらう方が面倒がないと気づいたのだよ。可能ならば、楽をすべきだ」
「俺は?」
「知らんな」
しゃあしゃあと言い放った軍師に、シャリヤルは思わず吹きだした。
そんなにすがすがしく突き放されては笑うしかない。
そこで腹を立てないところがこの軍師とうまくやっていけている理由なのだが、本人は気づいていない。

「別に損はするまい?」
「まあ、異論はない。言いたいことを言うわけだから」
「交渉成立だな。明日はよろしく頼む。場に流されず、挙手の後に大きな声を出してくれ」
「なんだ、その子供に言い聞かせるような言葉は」
苦笑すると、シャリヤルはグラスを手に取った。
「軍師殿の頼みならば仕方ない、明日は茶々を入れさせてもらうとするか。……団長殿が聞き入れてくれるかは知らんが」
「なに、何とかなるだろう。もし第二陣のままいくとしても、私がついているしな」
軍師も薄く笑ってグラスを手に取った。

「では、話もついたところで無駄な語りでもするか」
「貴殿と2人で? 理屈くさい酒など御免蒙りたいのだが」
「言うではないか。お前の酒こそ理屈くさいことということを自覚するのだな」
「そうかな」

「私は存外、お前と飲むのは悪くないと思っている」
表情も変えずに、軍師が酒を口へと運ぶ。
その横顔を眺めていたシャリヤルに、苦笑とも似つかない笑みが浮かんできた。
「困ったことに、俺もだ」
「困ったことだ」
「まったく」
2人してふふふと忍び笑う。
――本人たちは意識していないが、それは、はたから見れば結構怖い光景だった。

「今度クドラトへ来るといい。口が回らなくなるほど強烈な酒をご馳走しよう」
「クドラトの戦士は戦が終わった後の話はしないんじゃなかったのか?」
「明日で最後とは考えておらん。支部を叩いていかなくてはならないし、戦はまだ続く。その息抜きに、ということだ」
「ふむ」
軍師がニヤリと口の端を持ち上げる。
「悪くないな」

その言葉を合図のようにして、2人はかちんとグラスを合わせた。
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2009/09/23 21:55 | Comments(0) | TrackBack() | 二次創作

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