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上から花見
拍手SSを更新しました。てゆか書いてたら季節が夏になってしまったので、別物に差し替え……。そんなわけで次回分の拍手も出来ているので、次は初夏あたりに差し替えます。

さて、4月に入りましたー!
エイプリルフール的な何かはないのですが、花見SSを投下。

2軸で、チャコとフッチです。



●天空の花見(2軸/フッチ、チャコ)


切り立った崖の上に、2つの人影があった。

目もくらむような高さの崖だ。
常人であれば端に近づくことさえためらうだろうが、2人はその崖の端に
まるで椅子のような気楽さで腰かけ、そろって足をぶらぶらさせていた。

はるか下に淡い色をした森がある。
それは、まるで薄桃色の雲のようで。

「オレ、こうやって上から見る方が好き」

隣りにいる少年は返事をしなかったが崖下を眺める瞳に浮かんでいるのは肯定の色。
ややあって、「真上から見た方がもっと好きだな」と返した。

「本当に、雲の上を飛んでいる気になる。……雲の上より、綺麗だし」

最初に声を出した方がぴょこりと顔を上げる。
つられたように顔を上げた相手に向かってにかりと笑いかけた。

「だよな!分かってくれる人間に初めて会った」
「……普通の人は、真上から桜を見る機会がないからね」

笑い返した顔に浮かぶのは、懐かしさと、寂しさと。
2つの感情をない交ぜにして笑った少年は、再び眼下に視線を移した。

「そう言う僕も、一度きりだけど。……綺麗だったな」
「また見れるといいな」

同情ではなく祈りをこめて言われた言葉に、ただ静かに微笑んだ。
地上からはるか高みにいる彼らの元に、花びらは飛んでこない。
薄桃色の絨毯を眺めた後、何かを探すように空に向かって目を細めた。

「……でも、忘れてないから」

忘れないのは、真上から見た桜の森のことか、空を飛んだことか、
フッチにとっては、そのどちらでもない。いや、両方だろうか。
それは、喪ってしまった春の思い出。

そんな彼の表情に何を見たのか、チャコがつと目を眇めた。

「いつか一緒に見ような。一緒に、空、飛ぼうな」
「うん。いつか……」

フッチがぼんやりとした相槌を打つと、相手はちょっとだけむきになった。

「いつか、絶対、だぞ」
「絶対は分からないけど……」
「絶対だ!だってお前、飛べる人間だもん」

きょとん、とした表情を見て怒ったように言い募った。

「この高さで、こんなとこで。嬉しそうに下を覗き込めるやつが飛べないわけない」
「高いところが苦手じゃないだけだよ?」
「好きだろ?」
「好きだけど」
「ほらな。いつか絶対、お前は飛ぶ。断言してもいい」

なぜか口をへの字にしている友人に、フッチは小さく吹き出した。

「笑うなって!」
「ごめん。だって僕だけの力じゃどうにもならないんだもん」
「どうにでもなるって」
「そうかな」
「そう!」
「うん、じゃあ信じる。いつか必ず、一緒に空を飛ぼう」

高い、高い崖の上。
2人は顔を見合わせると、にっこりと笑った。
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2009/04/01 12:20 | Comments(0) | TrackBack() | 二次創作

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