今日は1日ティアクライスをやろうと思ったのに、朝起きたら既に弟が仕事に出かけてしまってました。
DS持って。
ごらあああ!!
前から言ってあっただろがあああ!!
まあ、どちらにしろ修羅場の影響で風邪ダウン気味なのです。
今日はもう寝てしまいますが、その前にバレンタイン翌日ということで、季節ネタを。
バレンタインSS。2006年に書いたものが原型だったりします。
毎年タイミングを外しちゃってたんだ……
DS持って。
ごらあああ!!
前から言ってあっただろがあああ!!
まあ、どちらにしろ修羅場の影響で風邪ダウン気味なのです。
今日はもう寝てしまいますが、その前にバレンタイン翌日ということで、季節ネタを。
バレンタインSS。2006年に書いたものが原型だったりします。
毎年タイミングを外しちゃってたんだ……
※坊=レン、2主=イリク、4主=カイトで、共演軸(幻水2ED後)
「……なんでチョコなの?」
心底不思議そうな瞳でじっと見つめられてイリクは思わず目を反らした。
―――と思ったら、反らした先にカイトがいた。
「うおっ!?」
「この辺でチョコなのは何故?」
「い…一瞬で人の視線の先に回らないでください……!」
胸に手を当てるという乙女のようなポーズになって、イリクは深呼吸を繰り返した。
*********
それでなくとも昨日から目を合わせにくいのだ。
カイトが育った群島諸国のバレンタインはこの辺りとはまるで違う。らしい。
女の子から男の子へチョコを送る日ではなく、親しく思っている人達とプレゼントを贈りあい、これからも仲良くしようとにっこり笑い合う日なのだという。
プレゼントで一番メジャーなのは花だが、心さえこもっていれば基本的には何でも良いらしい。
カイトが軍を率いていた頃、漁師は魚をくれたし軍師とは酒を交換したと話してくれた。
そんなカイトがデュナンで迎えたバレンタイン。
この国ではチョコを贈るものだと聞いたカイトは、それならばと手作りチョコを山ほどこしらえた。
それをにっこり笑顔で配りまくって男も女も次々に陥落していった挙句、最後にイリクの所へやって来て。
『今日はバレンタインだから。これ、俺の気持ち。―――イリク、大好きだよ』
にっこりと、まるで花がほころぶような最高の笑顔で言われて。
さらに、思わず硬直したイリクにわざわざ包みの中身を取り出して。
『食べてみて?』
と、最高の笑顔と共に差し出されて。
はいあーん、とまで言われた。
カイトが差し出したチョコが唇にくっついた瞬間、思わず飛び上がって一気に壁まで下がっても無理はないだろう。
自分でもはっきり分かるくらいに一瞬で真っ赤になった。顔から火が出るとはこのことだ。
「(でも、あれで照れる俺は人として正しい。おかしいのはレン、レンの方だ…!)」
イリクの隣りにはレンがいた。
イリクと違ってまったくの無反応だったレンは、バン!と勢いよく壁にぶつかったイリクを首をひねって見送ると、そのまま何も言わずに顔を戻した。
しばらくカイトの指先を眺めていたが、やがて顔を上げると喉の奥で小さく笑って。
そしてぱくりと、行き場のなくなったチョコを、それをつまんでいる指ごとくわえ込んだのだ。
『…!!』
背後で声にならない声を上げているイリクを見事なまでにスルーして、レンは唇についたチョコをペロリと舌で掬い取る。
カイトは一瞬驚いた顔になったが、すぐさま笑顔を取り戻した。
『レンも、大好きだよ』
『光栄だな。うん、美味い』
『お酒をたっぷり使ったのもあるけど食べる?』
『そっちの方がいい』
あーん、と口を開けたレンは、もちろんわざとそうしたのだろう。
にっこり微笑みあう2人の背景にはなぜかピンクの薔薇の幻覚が見えて。
壁とオトモダチになりながらイリクはそれをどこか虚ろな目つきで眺めていたのだった。
*********
まあ、その後カイトの勘違いはレンによって正されたわけだが。
「なんか、不経済だと思うんだよね」
一晩明けた今日も、不思議そうに首を傾げるカイトの瞳を、イリクはまだ直視できないでいる。
そんな心中を知ってか知らずか、カイトは疑問の矛先をレンに変えた。
「確かに保存はきくけど大量に食べられるものでもないじゃない?さすがの俺も処理に困ってるんだけど、レンはどうしてるの?」
「群島のように大勢とやり取りするわけじゃないから普通はそんなにもらわないんだよ」
レンは横目でイリクを見て口の端にちらりと笑みを浮かべた。
「好きな人に贈るから甘い気持ちってことで甘いもの。チョコと決まっているのは悩まなくて済むようにじゃないか?」
「うん、確かに分かりやすいと思うけど」
「最初に言い出したのは菓子業者みたいだな。売り上げを伸ばす作戦が見事ハマって習慣として定着したってことだろう」
「……ああ、お菓子業者さんの陰謀なんだ」
「そういうこと。100年以上前には、まず存在していなかっただろう」
会話しながら、2人は時折ひょいと小さな塊を口に運ぶ。
カイトが作ったブランデートリュフだ。親しい大勢とやり取りをするものだと思っていたから、カイトが作ったのは一粒一粒はごく小さい。
イリクはそんな2人にじとりと湿り気のある視線を送った。
「……レンって、神経太いよね」
「何を言う。僕はこれでも繊細な方だよ」
「よく言うよ。昨日、全然動じなかったくせに」
「その前の皆の反応を見て、面白いことになったなと思ってたから」
「……くそぅ」
「イリクは思ったより純情だったな。可愛い可愛い。……ぷぷっ」
「くそう…!!」
ずるずると机の上に突っ伏したイリクの頭を、カイトがぽんぽんと優しく叩いた。
「ごめんね、驚かせちゃったんだね」
「いーえー。俺が未熟なだけですから」
「そうだな」
「レンるっさい」
「でもイリクが大好きっていうのは本当だからね」
「……分かってます。分かってますから何度も言わないで……」
情けない声を出すと、レンが楽しそうな笑い声を上げた。
「イリクですらこうだ。カイト、しばらく大変だろうな」
「……うん。今朝、シュウさんにまで目を反らされて事の重大さを思い知ったとこ」
「あ~…それはグッジョブでした」
机に突っ伏したまま弱弱しく立てられた親指に苦笑し、カイトは新たなチョコをぽんと口に放り込んだ。
「でもどうしよう。今、もらったチョコの処理と皆からの誤解と2つ問題を抱えているんだけど」
「時が解決してくれるんじゃないか?」
「……レンは他人事だと思って」
「他人事だからな。さて、じゃあカイト、そろそろ行くか?」
腰を上げたレンを、イリクはきょとんと眺めた。
「どこへ?」
カイトまでもが不思議そうな顔をして椅子に腰掛けている。
その頭を小突くと、レンはサイドテーブルの上にある包みを指差した。
「バレンタインをお歳暮やお中元と勘違いしていたカイトが、トラン用に何も用意してないわけないんだろ?」
「あ、うん。…でも」
「説明すれば群島式でまったく構わないさ。行こう。僕もグレッグミンスターとロッカクに用があるし」
「……ちょっとレン、ロッカクの里は図々しいんj..「さあ行こうか」
イリクの言葉を断ち切って、レンはカイトを振り返る。
慌てて立ち上がったカイトは、双剣を腰に差すと荷袋をかつぎ、そこへ包みを数個放り込んだ。
それだけで旅支度は完了。150年の放浪暦は伊達じゃない。
「じゃあイリク、半月後くらいには戻ってくるから」
振り返ったカイトに、イリクは力なく手を振った。
「はいはい、行ってらっさーい。クレオさんとカスミによろしく」
後半にじゃっかん力を込めると、カイトが首を傾げた。
「カスミさん…?」
「行くぞ、カイト。夕方までにバナーへ着くようにしよう」
「うん…?あ、うん」
レンと、首をひねりながら扉を出て行ったカイトを見送ると、残されたイリクはテーブルの上のチョコをぽんと口に放り込んだ。
口の中でゆっくりとチョコを溶かしながら、ふむと小さく呟く。
「……いいな、群島式か。それならピリカやアイリたちにも贈れるし……」
にやりと口の端を持ち上げる。
「……あの鬼宰相がどんな顔したのか、この目で見てみたいな」
来年のバレンタインは、楽しいものになりそうだ。
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